接吻

二十八くらい。

 恋人よ、
 小鳥が とっておきの果実を啄むように、
 いつくしむように、くちびるをやわらかくはさみ、
 境界線 みずおと立てて霧消し、果てへ連れこみあおうとし、
 生と死の際に ただたゆたう。

  *

 死よ、
 天から降るましろのゆびが 月の翳うつろう如くそっと撫ぜ、
 つめたき慈愛で、さみしさ照りかえすひたいにふれて、
 孤独に緊張した魂の関節 くんずほぐれつ 生のみ 生のままに、
 おもたき瞼 ましろき空蔽うそれとかなさって。

接吻

接吻

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-30

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