透明な水

 精緻微細 無垢なる硝子細工熔かした如く、
 清む透明をしていらっしゃる さらさら清楚な水音だ、
 いきれは冷たく、きんと硬質な優美の星が線と曳くよう、
 扨て グラスに注ごう、宝玉のような氷を容れて。

 立ち昇る香気、純粋な水の硬質な冷たさ、
 シトラスやレモンですら、こんな湧水にはナンセンス、
 不純を剥ぎ落した如く、水晶の燦爛な光の翳、
 屹度 これは究極の清水、夢の湖にも汲めないそれ。

 それでは乾杯。私は独りで杯を掲げ、
 ぐいと飲み干し──楚々たる透明な口当たりを
 想像していた私、銀の散り灼けるような痛みに喉はわななき、

 眸、紫の吐く炎に刹那で轟とけぶる、きよらかな水晶とは、
 穢れたわが身には毒よりも病的、アルコホルよりよっぽど酩酊させる、
 清楚とは──瑕負う魂の険しき陰翳、血飛沫、赤悪酒(レッドアブサン)、苦き不断の闘い。

透明な水

透明な水

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-30

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