Superstición Disfrazada de Novela 邦題 小説を装った迷信
子供から・・何処までかは分からない・・。仮面舞踏会・・。
川田明美は昨日のTVの予報で、今年の夏は短いと報じていたのを思い出した。
其れを知っているかのように、陽射しは強烈さに哀愁を込めている様に感じられる。
南東向きの部屋のカーテンは常に閉められたままで、表で室外機が活躍している。
そんな事務所の中で、殆どのサラリーマンが盆の夏休みを前に忙しい毎日を送っている様に、明美もあと二週間もすればやって来る夏季休暇を楽しみにしている。
明美の仕事は、此の暑い最中でも不思議なMaskをしてイベントを企画運営する会社の責任者だ。
とは言っても、補助が一人だけ、スポンサーはいるが、出勤して来る事も無いし、運営に口を出す事も無い。
実質、明美と助手だけで活動している。
Masqueradと言えば仮面舞踏会を想像するだろうが、明美のMaskは二面性を持っている。
単なるイベント用とその他(Mascarada que es un loo obvio 仮面舞踏会其れは明らかな見せかけ)。
客が各人なりに凝った衣装をしてくるので、スタッフと見分けがつくように、明美は白一色の上下スーツに同じく白色の特殊Mask、助手は同じパターンで黒一色、目の部分は周りが良く見える様に大きめに出来ている。
何時ものMaskの衣装の明美が、部屋の灯りを消すとテーブルと3D画面が光り出した。
テーブルに本日の予定を書いた図面の様なものを拡げ、助手の小池哲夫に話し掛けた。
「此の会場では、表向きは社交的な仮面舞踏会の様だが、何時もとは少し違った取引が行われる。今回は、単なるイベントでは無く、各国の要人が集まる中での、某国王女の誘拐事件をMasqueradeする」
「其れは、過の有名なアマダ王国のソピア王女ですね」
哲夫が壁に掛けられた3D画面に映っている世界地図の一か所を指差した。
「そう、現在国際間で最も注目を浴びている国」
Maskの中央に手を添えながら、明美が画面を切り替えた。
世界各国の資産比較表が映し出されると、画面から飛び出すように立体化した後、各国の皇室の顔がアップされた。
明美が、其の中のアマダ国と隣の大陸に位置するユーラ国の皇太子コロナを続けて見ながら、「今、アマダとユーラの間には結婚の話が持ち上がっているが、此れは政略結婚」と、哲夫が「其れを阻止する為に誘拐事件を起こそうという訳ですね。それで、其の理由は・・」。
明美が再び画面を変え、Diamondの埋蔵量と軍事力の格差を映し出しているtabと元の世界地図のtabを並べながら、「つまり、今の世界のバランスは資産で一位のアマダと軍事力で一位のユーラと、更に第三国と謂っても良いだろうが、此の端にあるキラビアは思想の点で平和を望み俗に『Superstición』と呼ばれる魔力を使うと言われているが、其の三国を中心に世界は刻々移り変わろうとしていると言える」と、悦男が、「成程、キラビアの皇太子は確かシガリアでしたね。其方に王女をという訳ですね。で、王女の本心は?」明美がテーブルの上の花瓶の様Psychomachineが青く光り出すのを確認しながら、「此の青い灯りは王女の本心の判定を現わしている、PsychomachineはソピアのSignal intention意思を写しだし、其れがブルーという事はキラビアのNational Flag Colour、言うまでも無い」
哲夫がMaskの端を押さえるとMaskの表面から白いレーザー光線が3D画面を捉えた。「正に、オール平和決着という事ですね。こりゃ、遣り甲斐があると言うものだな。しかし、真面にユーラを敵に回したら厄介な事になるからな」と、明美が微笑んで、「其処は、リスクがあって依頼された事なんだけれど、Masquerade会場で起きた事まで追及は出来無いでしょう、私達がMaskに紛れて二人を結び付けたとしても公の場で問題にする訳にはいかないでしょう。無事に終わらせて夏季休暇をのんびりと過ごさなきゃね」。
二人が、其々のMaskの中央に指を添えると色違いのレーザーが幾つかある部屋の灯りのスイッチを捉えた。部屋には打ち合わせの終了を示すように灯りが消えて表の陽射しだけが残されていた。
其れから一週間も経った日、Masqueradeが開かれていた。
高層ビルの110階がMasqueradeの舞台。オールグラス張りの窓の外には街の灯りが燦然と輝いているが、内側からは其れが見えても、外からは中は真っ暗の様にしか見えない。
ガラスのテーブルが幾つも並んでいる周りに各国王室のメンバーが立ち並び、開演を今か今かと待っている。天井には各色のCyberlightが密集したChandelierが幾つもぶる下がっている。
当然ながら各国の警護の組織も一つ上の階に待機しているのだが、屋上の巨大なヘリポートには各国用のヘリが整然と並べられており、帰国の際は特別機用の空港まではすぐだからその点は支障が無い。
会場に集まったのは、38か国の皇室のCouple、というのも当然ながら二名で参加する事が条件だったから。
明美の影法師(つまりは数種の映写Machineで照らし出した、虚像が今晩の司会者だが)が開会宣言をした。
今迄明るかったホールが照明と外の街の灯りに照らされ、ほど良い暗さに包まれた。
既に直前にテーブルに並べられた料理と各種ワインが、fichus'dimensionsMusicと共に客を歓迎している。
時間は二時間程。
この間に誘拐事件を成功に導かなければならない。
主催の二人を除いては、ホールの面々の変身振りは、誰一人として本来の姿を想像させない。
其れに対応して、注目のソピア、コロナ、シガリアは二人に判別が出来る様に、特殊な光線に反応しているし、また、特徴のある目印が見られる。
二時間の内、終了間際の約ニ十分以内にソピアとシガリアの本物と偽物を擦り換えなくてはいけない。
ホールでは、二回あるDancetimeには各国のCoupleが思い思いのStepでDanceを踊る。
二人の計画では、此の二回目に、Dummyを送り込む予定だ。
それ以前は、各国の懇親会となり、誰が誰だか分からない程入り乱れて飲食と会話で互いを弄ぶ事になる。
始終流れているMusicも社交のムードを盛り上げる様に、主にユーラやアマダの曲を中心にアマダの位置する欧州系統の上品で軽快でノリが良い曲目が幾つも流れている。
和気藹々とした雰囲気の中で、全員が心地よくMusicに合わせる様に、楽しんでいる。
二人にとってのソピアの目印は、Maskの端に付けられている大きなDiamondだ。
コロナの目印はMask表面の主に赤と銀色に輝くスパンコールで、此れはおそらく権力を意味しているものと思われる。
そして、シガリアの目印はMaskの青い宝石である。
Musicがスローな曲に変わりホールに流れ出した。
一回目のDancetimeの始まりだ。
ソピアは意図的に頻繁に相手を代え、また、コロナは次第にソピアに近いテーブルの相手を選んでは踊りだした。
銘々が何やら話をしながらしっとりとした流れに乗っている様だ。
十数分でMusicが代わり、照明がやや明るくなると、再び社交の時間となる。
二回目のDancetimeまでにソピアのそっくりさんがホールの隠し扉の中で待っている。
衣装を始め目印になるものは、全て彼女と同じで区別は付かないが、大きなダイアはまがい物だ。
二回目のDancetimeが来る直前にソピアは隠し扉から、廊下に出る。
同時にそっくりさんと入れ替わりだ。
背丈も何もかも同じだ。
やがて、Dancetimeが始まった。
明美と哲夫は、ソピアを案内して、護衛に見つかり易いElevatorは避けてSpiralstepで一階まで下りてから、隣の建物の屋上に上がると用意してあったヘリに乗ると他の連中より一足先に空港へ向かう。
空港にはもう一台の何処の国のものでもない特別機が用意してあったから、其れに乗り込んで本国へ飛び立つ。
ホールでは偽のソピアがコロナに近付くと、コロナはソピアの手を取りstepを踏みながら、求婚めいた話をしだす。
偽物のソピアは何とか返事は誤魔化したままであるから、流石にコロナもイライラとしてきたところに、偽物がコロナに微笑みコロナに媚を売ると、コロナも安心した様に手を離す。ソピアはコロナから離れる様にStepを踏みながら素早く裏手の隠し扉に消える。
再び照明が明るくなり、社交タイムに変わった時、ソピアも偽物も姿を現さない。
偽物のソピアはホールに戻る事は無かったから、アマダの皇室付き達の茶番が始まる。
ソピア王女が行方不明になったと騒ぎ出した。
まだMasqueradeが終了していないホール内では、其の情報が人づてに伝えられたが、公式な発表では無い。
コロナの顔が驚きの表情に変わったが、他の諸侯達は、事件だとの認識は軽く、コロナ程騒ぎはしなかった。
ユーラ国はコロナの仰天振りから、皇室関係者も動揺を隠せなかった。
コロナは、先ず、どうしてソピアが居なくなったのかを追求しようとした。
諸侯が揃っているMasqueradeの最中では、それ以上、事件の進展は望めない様だと判断したコロナは、キラビアのシガリアを探し出して食って掛かった。
というのは、兼ねてから、コロナは、ソピアを巡って、シガリアの存在を疎ましく思っていたからだ。つまり、以前それと無くアマダとキラビアの友好関係が持て囃された時期があったし、両国共其々の王女と皇太子の結婚を望んでいるのでは・・、そういう噂が、ユーラ国にまで伝わっていたから、コロナとしては内心穏やかでは無かったところに、行方不明といっても、何かうさん臭さを感じたのだろう。
シガリアは知らぬ存ぜぬでその場は通そうとしたが、内心、仮にソピアと結婚をするにしても公式発表は聊か憚らざるを得ないと思っていた。
それ以前に、まだMasqueradeが行われている最中に、興奮したコロナは、武力行使も辞さないという発言をしたのだが、ユーラの官僚達は行方不明になったのはシガリアの仕業では無い、何よりシガリア本人は駆け落ちした訳でも無く、他の諸侯と相塗れてホールにいたのだからと、事を大きくさせない様にとコロナを諫めるばかり。
しかし、コロナは、諦めきれずに今回のソピアの行方不明とシガリアとの関係は、間違いないと勝手に判断したようだ。
Masqueradeの終了の時が刻々と迫る中ホール内で、コロナがシガリアを見つけ出し、主催者である二人に、事の次第を明らかにするようにと詰め寄った。
Masqueradeが終了した後では、事は公の問題として二国間の紛争にまで成り兼ねないから、何とか終了までに片付け無ければならない。
二人はMaskの力を最大限発揮するようにと試みた。
白いMaskは、一瞬眩く輝くと、時を止めた。
諸侯達や側近がActionを止めたままでいるのにも拘わらず、コロナとシガリアの二人は向き合っている。
黒いMaskが煌めくと、二人の手には其々剣が握られている筈だったが、不公平な事にコロナの剣は一回り大きいし、先に金属球を付けた鎖まで提供してしまった。
黒Maskは、「しまった。失敗した。こりゃ大変な事になった」と、慌てても遅い。
コロナは其れに驚くばかりか、これ幸いとばかりに、笑みを浮かべると剣を振りかざしてシガリアに襲い掛かった。
シガリアは、応戦をして、二つの剣が触れ合う度にホール全体に響き渡る金属音と共に火花が飛び散る。
身体の大きなコロナは力の限り剣を振り下ろし、相手の剣を叩き落としそうな気配だ。
コロナは、鎖の先に金属の球を付けた物をとりだすと剣で切りかかるのと同時に片手で振り回し始めた。
力のあるコロナが思い切り剣を振り下ろすと同時に、鎖の球を飛ばす。
剣と剣は増々大きな音をたて、火花も鮮やかさを増す様に飛び散る。
金属球がシガリアの顔を掠めて傷をつけたようだ。
次に、金属球がシガリアの剣に絡まって、剣は二本ともコロナのものになった。
シガリアは無防備、幾らなんでも此れでは戦いようが無い。
形勢は完全にコロナが有利と思えた。
コロナがとどめの一撃を食らわそうと身構えて剣を振り下ろした。
シガリアは落ち着き払って、Maskに手を添えると、魔法のSuperstitionをsetting、次の瞬間、シガリアの手には黒いしなやかな鞭が握られている。
身体が宙に浮くように、舞い上がると、ホールにぶる下がっているChandelierに鞭を絡ませる。
更に頭上からコロナを目掛けて舞い降りては、鞭が音を立ててコロナの身体に文字を描く。再び別のChandelierに飛び移っては、舞い降りる。
とても人間ワザとは思えない程、身軽に宙を飛び、鞭の音を立てながら、また宙に・・。
其のMaskには青い宝石がゆっくりと点滅している。
哲夫があまりの美しさに思わず明美のMaskを見た。「格好いい!」
コロナが上下左右を見ては目を回しそうになった時、青い宝石の点滅が凄いSpeedに変わり、宙から槍が何本も現れて、コロナの立って入る周りに恰も檻をつくるように次から次へと刺さっていく。
宙から舞い降りたシガリアは笑いながら、鞭を一振り。
鞭はコロナの衣装を剥ぎ取ると、剣を巻き取り遠くに飛ばす。
シガリアが鞭をもう一度振ると、コロナの身体にSの文字が描かれた。
明美が呟く。「ソピアのS、シガリアのSなのかも・・。」
勝負あったとばかりに、明美の白いMaskが眩しく輝き、時間を元に戻す。
哲夫のMaskが煌めくと、剣も鞭も消え失せて、穏やかなホールが現れた。
何事も無かったかのような賑やかなホールで、コロナは目を擦っている。
コロナは、身体は元のまま衣装を着ているが、腕に小さなSの文字が残されているのを不思議そうに見ていた。
Masqueradeは終了した。
各国の諸侯は銘々特別機で帰国の途に就いた。
ソピアとシガリアは目出度く結婚をする事になった。
コロナが怒り出して、国際紛争にまで拡がるかと思われたが、全ては稀有に終わった。
事務所で明美が哲夫に話し掛けた。「ピッタリ、予定通り。ゆっくり夏季休暇を楽しめるわね」
明美の後について事務所を出た哲夫が、「本当、いい事だ・・」といいながら、締まりが悪くなってきていたドアを後ろ手に思い切り閉めた。
「事務所の帽子掛けに飾ってあった、白と黒のMaskが、ひらひらと床に落ちていった」
まばゆい夏の陽光が辺りに立ち並ぶビルの窓に当たり、窓ガラスが競い合うように反射すると、街は思い切り熱を帯びて、遥かな蜃気楼の向こうに見えた。
Superstición Disfrazada de Novela 邦題 小説を装った迷信
仮面舞踏会を「マスカレード」と呼ぶが、そんな雰囲気が似合いそうな・・どうという事は無い物語・・。