George21~連合軍側の紫電改のコードネーム

George21~連合軍側の紫電改のコードネーム

大東亜戦時の技術力が優秀だった此の国の戦闘機や戦艦のプラモデルで遊んでいるうちに・・何時の間にか不思議な世界に入る。

 山田幸雄は小学5年生。学校から帰って来ても、母は近くのスーパーでパートで働いているから一人ぼっちだ。父は一昨年病で亡くなった。
 母から、帰ってきたら宿題をやってから遊ぶ事と言われているので、宿題をやった。プラモデルを持って風呂に入った。給湯器で温められた湯に戦艦大和を浮かべて遊んでいたが、飽きて来たので大和を湯の中に沈めた後、「大和、発進!」と言いながら手を放すと、大和は湯の中からゆっくりと浮上して来た。
 あまり水を入れると壊れるかとちょっと心配しながら、風呂を出て母が作ってくれた遊び着に着替えた。シーンと静まり返った部屋は何となく寂しいので、テレビをつけた。「男の人が、先週・・国の航空機が飛来したので、スクランブル発進した自衛隊機がロックオンされた件で・・」
 幸雄はリモコンでチャンネルを変えたが、面白そうなアニメとかはやっていない。大和をタオルで拭いてから、乾かそうかと窓際に置いた。今度は、プラモデルの紫電改を持って表に出た。父が亡くなってから、この住宅に引っ越しして来たばかり、母が家賃が安いからと言っていた。だから、まだ一緒に遊んでくれる友達はいない。父が生きている間に一緒に作ってくれたものだから、二つのプラモデルには父の想い出が。
 父が作りながら、
「幸雄さあ。この紫電改と言う飛行機は、USAのF6F ヘルキャットに似ていたから、味方の陸軍機や大和からも間違えられて誤射される事もあったんだよ。昭和26年に来日した米空軍将校団の中にアメリカで紫電改をテストした中佐がいて、『ライトフィールドで紫電改に乗って、米空軍の戦闘機と空戦演習をやってみた。どの米戦闘機も紫電改に勝てなかった。ともかくこの飛行機は、戦場ではうるさい存在であった』って言っていたんだ。こんな話、幸雄にはちょっと難しかったかな。でもね、最後の飛行機として優秀だったんだよ」。
 幸雄は難しい言葉は理解できなかったが、優秀な飛行機だとは思った。



(1945年(昭和20年)3月19日343空は初陣で米艦上機160機に対し、紫電7機、紫電改56機で迎撃して、米軍機58機撃墜を報告した。日米双方に戦果誤認はあったが、日本最後の大戦果となった。343空の活躍で戦後は「遅すぎた零戦の後継機」として認知され、零戦、隼、疾風と並ぶ代表的な日本軍機として一般に認知される。米技術雑誌『ポピュラーメカニック』では、米空軍の試験で紫電改のマグネットを米製に替え、100オクタン燃料を使って空軍で飛行した結果、速力はどの米戦闘機にも劣らず、機銃威力は一番強いと紹介された。 ピエール・クロステルマンの著書「空戦」では、紫電改が高度6,000mでP51マスタング44年型と同程度のスピードを発揮したことからマスタング44年型のカタログスペックを基準とした最高速度時速680km説を採用しており、当時の連合軍の空軍関係者はその程度の速度と認識していた。)



 一人で遊んでいる内に、幸雄はおかしな事に気が付いた。
 周りが止まって見える。人や公園のブランコも。
 見た事も無い様なスクリーンの様なものが、幸雄の目の前の空間に浮かんでいる。
 スクリーンには何処かの国の飛行機が何機か飛んでいる映像が。突然、幸雄の持っている紫電改と同じ飛行機の編隊が、30機くらい雲の中から次々に姿を現し、それらの飛行機の正面に。画面はアップされ、その飛行機の操縦席にいる何処かの国の人がビックリしている、紫電改を見て急回避する。何機かの紫電改は旋回をして相手の飛行機の後ろにピタリとつけた、あとの紫電改は相手の飛行機を周りから取り囲んでいるから、相手の飛行機は動くに動けない、接触しそうなくらいに近付けている。紫電改にしては、速度が異常に速すぎる。幸雄の持っているモノと違うところは日の丸の赤が見えない。
 突然、画面が変わった。(北緯30度43分 東経128度04分、長崎県の男女群島女島南方176km、鹿児島県の宇治群島宇治向島西方144km)。海中から巨大な戦艦が浮上して来た。46cm主砲3基9門を備えているから、多分、大和だろう。それにしては、先端に菊の紋章が無いし、後方の海軍旗が無い。
 幸雄は笑いながら、「何だ、さっきのお風呂と同じじゃない」。
 大和は空に向け、主砲を次々に発射、凄まじい音がする。幸雄は、それを見て耳を両手で塞ぎながらも感動している。一方、何処かの飛行機は、あっという間に遠ざかって行った。
 夕闇が迫って来る。何時の間にかスクリーンはその闇に溶け込むように無くなり、母が幸雄を呼ぶ声がする。
「お帰り」。幸雄は、買い物袋を重そうに持っている母に近付くと、一緒に袋を持ってやりながら、「宿題は全部済ませたからね」と言うと、母はニコッと笑った。
 母はテレビをつけた。「・・来季の防衛予算は・・」
 リモコンのチャンネルを変えた、「天皇交代に使用する車は8000万円・・」。
 またチャンネルを変える。「・・UKと言えばバッキンガム宮殿を思い浮かべる方も多いでしょうが、世界でも珍しい現役の宮殿ですが。実際、エリザベス女王は平日はここに住み、実務に当たっています。(週末はウィンザー城に滞在。)要は女王の家を一般観光客に公開しているわけで、寛大な王室だと言われておりますが、この一般公開の入場料も、立派なイギリス王室の収入源。
 ちなみに、中で売っているグッズも立派なイギリス王室の収入源。
 実は、イギリス王室は、こういった観光収入や不動産収入により、自分たちで稼いだお金で生活してるんですよね。(日本の場合は、皇室の費用は国家予算で賄われてます。)今日は評論家の・・さんをお招きしてこういった事について伺いたいと思いまして・・」。



 母は、すぐにテレビを消しながら、「生活するだけで精一杯、関係無い・・」と言いながら、腰を叩き、背を伸ばす。
 幸雄は学校で、「天皇は象徴」と習った。そこで、母に、「母さん、象徴って何?総理大臣とどっちが偉いの?」
 母は、室内を忙しそうに歩きながら、「ええ?天皇?戦争中はね、兵隊さんが「天皇陛下万歳」って言って死んでいったそうだよ。本当は、「母さん」って言って死ぬ人が多かったらしいけどね。そういう事はお父さんが生きてればね、詳しかったんだけど。でも、総理大臣ってのは、始終変わるから、頭のいい人が総理大臣になってくれれば、生活も楽になるかも知れないけど、まあ、無理だね。金の無駄遣いばかりして、全く役に立たない人間ばかりだね」



 幸雄は両手にプラモデルを持ちながら呟いた。「あれは、きっと、お父さんが見せてくれたんだな」
 幸雄は、晩御飯の支度をしている母の背中を見ながら、「お母さん。明日休みだったよね」
 母は菜を刻んでいる手を止め振り返ると、「ああ、偶には休まなきゃ、これだよ」と、肘枕の仕種をする。
 幸雄は微笑みながら、「ならさあ、明日の朝はゆっくり寝てなよ。それから、お父さんのお墓参りに行こうよ」
 幸雄は布団に入ってから、横に寝ている母を見た。よっぽど疲れているのだろう。もう寝息をたてている。
 幸雄はそんな母に、「有難う。僕の為に一生懸命働いてくれて」。
 そして、眠くなったから良くは分からなかったけれど、父がこちらを見ていて、ニッコリ笑いながら、「どうだった?少しは面白かったか?」と言ったような気がした。
 幸雄は眠くてもう限界だ、「父さん明日、会いに・・お休み・・」と言いながら、夢の中に入って行った。


 まん丸な月が、小さな窓の開いている隙間から、光を注ぎながら、
「頑張れよ!俺も見ているから」。

George21~連合軍側の紫電改のコードネーム

母子家庭の家庭の子供が見たものは。母親の愚痴は生活が苦しい事だ。
一体、人類社会・此の国は進化したのか其れとも退化したのか・・? 

George21~連合軍側の紫電改のコードネーム

全体主義の当時は実直勤勉だった国民。技術力も優れていたのだが、民主主義の社会になり果たして進化したのか、それとも長く続いていた平和の中で此の国は遂に世界一の貧乏国に成り下がった。 身の回りの物の開発は進んだのだが、便利になった一方何処かに忘れてきたものも無くは無いようだ。休みだらけのある意味片手落ちの進化を遂げた・・などという話はこの物語からは窺えないが・・。 頭脳レベルもかなり下がったようで・・世の中・・漫画社会と言えなくもないようだ・・。此れは児童書の類に過ぎないが・・。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-29

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