刃
わたしは わたしの最も脆く 柔らかい、
最もか弱い領域のわたしで 現実へ──刃向かう。
わたしは 弱いよわい 砕けやすいわたしの部分を
最も硬く冷たく、靭い神殿へ──光の凶器と、音楽で投げ放つ。
わたし 遥か頭上の銀に赫う 虚の絶対の城みすえ、
わたし 眼前の燦爛な照りかえしの 冷然非情な世界へ、
弱く 柔らかく 脆く とくと水音立て頽れるような
「わたし」を眼球抜くが如く抉りとり──最底辺の弱さを晒し、牙を剥く。
わたし 敗北をみすえ 敗北を期し 敗北へ焦がれ、
されどそれ わたしの生の文脈により、墜落という美へ
──椿の首 幻想の城 月へシオマネキの降る腕の翳 犬死詩人──
そんなもの等へ、わたしを剥く、青く あおく彗星を曳き星屑と棚引いて。
赫々たる「月硝子の城」 刹那、久遠の火と青々と炎ゆる。して、消ゆる。
切先なき刃──故郷へ落葉し葉群へふわと侍り 不在として、永遠を照らす。
刃