わたしは わたしの最も脆く 柔らかい、
 最もか弱い領域のわたしで 現実へ──刃向かう。
 わたしは 弱いよわい 砕けやすいわたしの部分を
 最も硬く冷たく、(つよ)い神殿へ──光の凶器と、音楽で投げ放つ。

 わたし 遥か頭上の銀に(かがよ)う (まぼろし)の絶対の城みすえ、
 わたし 眼前の燦爛な照りかえしの 冷然非情な世界へ、
 弱く 柔らかく 脆く とくと水音立て(くずお)れるような
 「わたし」を眼球抜くが如く抉りとり──最底辺の弱さを晒し、牙を剥く。

 わたし 敗北をみすえ 敗北を期し 敗北へ焦がれ、
 されどそれ わたしの生の文脈により、墜落という美へ
 ──椿の首 幻想の城 月へシオマネキの降る腕の翳 犬死詩人──

 そんなもの等へ、わたしを剥く、青く あおく彗星を曳き星屑と棚引いて。
 赫々たる「月硝子(つきがらす)の城」 刹那、久遠の火と青々と炎ゆる。して、消ゆる。
 切先なき刃──故郷へ落葉し葉群へふわと侍り 不在として、永遠を照らす。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-29

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