Contactos a tiempo 邦題 予定通りの連絡先
学生時代旧交のあった男女二人のキツイ話。
広島邦夫は満員の車内で考えている。病院で亡くなるという訳にはいかない。知り合いはたった一人の女優だけ・・。
邦夫は、女優とは付き合いが長いが、彼女には事実婚の亭主がいる。
とは言っても、現在は完全に別居をしているのだから、その決着がつけばまた異なるが。
三笠夕子は大女優で邦夫の学生時代からの友人だ。邦夫が海外に行っている時に交際が途切れそんな事になった。
偶に見るのは・・・TVのニュースだが、其れに出て来るキャスターの女の子はあどけない顔をしているから、夕子の若い時を思い出すが、夕子は大人の美女だ。
元々、邦夫の親族は少なく昨年最後にいとこが亡くなり、アイダホに住んでいる女性のいとこは音信不通。
病院で何かの病気で死ぬとなると、誰も見届けるものがいなければ面倒だ。其れで、夕子に連絡を取ってみた。
取り敢えず会う事になった。
「久し振りだね。忙しい所悪かった。実は・・」
此れ此れと事情を話す前に、御主人との経緯はどうなっているのかを尋ねてみた。
どうやら、相変わらず別居の様で会う事は無いという事だ。二人の関係の細かいところ迄の関心は無いが自らの現状を話してみた。
「・・緊急連絡先もないという事なの?」
「ああ、保証人は金銭的な事だから問題は無いが、万が一の場合の連絡先が無くて困っているんだが・・子供?一人立ちしたら縁は無い・・」
「・・そういう考えもあるのね?うちは、子供がいなくて良かったけれど・・其れでどうするつもりなの・・?」
「・・いや、其れで・・」
「・・其んな事なら、私が万が一の場合の連絡先になるわ・・」
邦夫は其れは助かったと思ったのだが・・。
「ああ、そうして貰えれば助かるな。迷惑だろうけれど?」
夕子は微笑むと。
「・・何か随分他人行儀になってしまったのね。昔の貴方はそんな人じゃ無かったのに・・仕事が忙しくていろいろあったのかしら?」
邦夫は其れもあるがと、以前の事が気になっていた。
以前、彼女が結婚する前に聞かれた事があった。私、こういう話があるんだけれど・・と。
其の時に邦夫の頭に浮かんだのは、自分が海外に行けばなかなか会えなくなるという事と、いや、其れよりも役者の男性との関係が上手くいっているのであれば、関わり合いたくないと思った。
業界の人間だから、自分のような一般人とはまた異なり、其の方が自然であるし彼女の気持ちが一番で、其れで順風満帆であるのなら其れに越した事は無い。
まさか、二人の間がこのようになるなど考えても見なかったが、当時、自からの気持ちを吐露(とろ)する事は避けた。
邦夫は自らは所詮別世界の者、増してや互いに仕事に全てを掛けている身であるしどうしようもないと思った。
話は変わり・・試しに肩書を隠し結婚サイトに登録してみた事を夕子に・・。
「ところが、昔のこの国ように話しやすい女性などまずいないね・・。levelは兎も角、世代の交代で女性も本来の女性とは思えない様な気もする。やめれば良かったと気が付いたのだが・・。其れに君のような同じ学校を出ていて気の置けない女性という者は先ずいないようで・・。先日も、何処の大学なのか分からない女性に、趣味で小説を書いたり楽器の演奏をしている事を伝えたら、此処は結婚相手を探すところですから仕事の宣伝はお断りですお生憎様・・で呆れた。本職は法務職で、此れはあくまでという・・言う気も起きなかった。全く教養のない心太(ところてん)式に大学を出たというだけの女性ばかり。案外、男性より女性の方が自分の世界に閉じこもってしまう傾向が強いのか・・いや、そうではなく、世の中考え方が違ったのだろう。だからやめるがね・・」
夕子は邦夫の顔を見ながら笑う。
「・・其れなら、私も其のサイトとやらに登録してみようかな・・?面白そうだから・・」
邦夫はまさかと思う。冗談がきつい・・確かに中には少しばかりという女性もいない事は無いが・・女優・・はあろう筈もない・・。
「しかし、女優が・・などはあり得ないよ?ジョークがキツイのは相変わらずだね・・」
彼女は表情を変えると。
「・・ねえ、どうして、あの時、私が・・前の人の事を話した時に・・はっきり言わなかったの?」
邦夫はやはり、其の事かと思った。
「・・其れは君が希望している事だから・・其れに、会えなくなるし、君は業界人だからまさか、海外までは来れないし・・其の彼の事が好きならと思えば、何も言えないよ」
「昔の貴方の事だからと、あんな事言ったのよ・・止めてくれるのかなと・・」
「それじゃあ、彼が好きでは無かったの?・・其れなら・・僕の責任もあるって事かい・・まさか、其処までは言えなかったよ」
夕子は、一体何年付き合って来たのか?何もかも分かっていると思ったのにと言う。
邦夫も、こりゃ拙いと思いながら・・笑顔で・・。
「其れなら、連絡先にでもなって貰おうかな・・?」
彼女は笑いながら。
「ええ、いいわよ・・病院だけでなく・・違う連絡先にも・・って、前から同じじゃない・・?」
其処まで言われれば、遠慮など必要無いと思う。
結局、二人の話はやっとの事、帳尻があった。
邦夫は夕子に写真を見せた。
サイト用にとった何枚もの写真だ。
どうして何枚も取ったのかと言えば、撮る度に年齢が異なって見えるから。
彼女は手に取り。
「此れなんか・・いいんじゃない?私ならこの写真ならいいねするかも・・?」
更に、笑いながら。
「どれも同じ様なものよ・・年齢が違ったって本人であれば同じ事・・考え過ぎなんじゃない・・?少しは別の事も考えてみたら・・?」
「・・ああ、分かった。で、君、御主人とは・・どうするの?は、もう聞いたよね・・事実婚も結婚も法的には変わりはないから・・あとは、完全に縁を切るという事だけれど・・彼の方はその点はどうなの?」
彼も、すっかり承知しているからと、簡単な書面を交わして、済ませる事になった。
其れは邦夫の専門だから、書類を作り渡す事にした。そういう事情では、慰謝料は発生しない。
マスコミが動いた・・。
「事実婚だった事を話し・・終止符」
更に、週刊誌が、その間の出来事や心境につき・・記事にする。
「で?此れから・・ご予定は・・何方かと・・などあるんでしょうね・・三笠さんの事なら、何も無いという事は無いでしょう?」
マスコミはスクープを取りたい。
其れが面白ければ、尚の事スクープの価値は高くなる。
「ええ、結婚サイトに登録して知り合った男性で気にいった方がいましたから・・?」
記者達は一斉に笑う。
「本当のとこ・・聞かせて下さいよ・・?」
「病院の連絡先になってくれって言われましてね・・其れで・・どうしようかと考えて・・」
更に記者の笑いは大きくなる・・。
週刊誌には更に多くの記事が掲載された。
二人で、局に行った時に・・キャストの変更を知らされた。
「・・此れ、恋愛ものですから・・代えますね・・そうだ、御主人に代えましょうか・・?丁度いいじゃないですか・・息があって・・」
スタッフの冗談もキツイ。
二人の住まいは、専属の不動産屋が気を利かせてくれ、浜松町の近くのマンションになった。
学生時代によく来た東京タワーが良く見える。
「僕は・・賃貸でも良かったんだけれど・・?」
「・・あの頃は・・四畳半の貴方のアパートによく行ったものね・・其れでもいいわよ・・」
全く、キツイ冗談は、相変わらずだ。
局では夕子がスタッフに。
「今日はケツカッチンだから、16時アウトでね・・」
(業界用語で、この次に別の予定が入っており、時間が詰まっている(のんびり収録できない、延長できない)を意味する。)
スタッフは、外で見ている邦夫の姿を見て・・笑っていた・・。
二人が住み始めてから、彼女が不在の折、週刊誌の記者が来る。
「あの、此方が・・其の・・今回の・・?」
邦夫は・・面倒になり。
「・・いえ?僕はこういうもので・・」
名刺を差し出す。
「ああ、弁護士さん?何かあったんですか・・?」
「いや・・彼女がおかしな男につけ狙われているというので・・相談を受け・・」
記者は此れはまたスクープかと押してくる。
「・・ええ、其れはファンの方とかでは無いんですか・・?本当に狙われているんだったら・・いただきだな・・」
記者は増々記録を・・。
その場は何とか誤魔化したのだが・・其のまま、変態にでもしとこうかと思った。其の方が世間は賑わうだろうし・・もう少し物語を考えようと思う。
只、前の男の事でストーリーが一つあるから、今度は派手な事件物にでもしようか・・其れには架空の人物か・・自分が扮するかだが・・。
夕子は其の話を聞き、呆れたように。
「・・あらあら・・今度は暴漢になるの・・?」
「此の住まいは居心地は良いけれど・・やはり・・業界人となると・・マークが面倒だね・・?かといって、また引っ越すという訳にもいかないしね・・」
夕子は面白そうに笑うと。
「いいじゃない・・暴漢の主人と一緒なんですってことでも・・そういうの先ず無いだろうから・・ところで暴漢ってどんなことするの・・?」
「・・おいおい・・また、キツイ冗談かい・・暴漢は架空なんだから・・暴漢が一緒にいたんじゃそりゃ拙いよ・・。僕が捕まえた事にしとこう・・」
邦夫は架空の暴漢を、弁護士が追求したという事にする事にした。
再び記者が来た時に、その辺りの状況を面白おかしく話してみた。
顧問弁護士の活躍で・・女優の危機を救ったという事で・・記事が書かれた。
案外、いい加減な事でも、大騒ぎになるのが業界と言えそうだ。
SNS等でいろいろな反響が寄せられたが・・もう、事件は落ち着いたのだから、記者も来なくなるだろう。
夕子が撮影が終わって帰ってきた。
「・・ねえ、貴方の物語・・スタッフに話したら、結構受けちゃって・・今度、そんな奴やってみようかなんてね・・」
邦夫は思う。
女優を巡っては・・いろいろ騒々しい事もあるんだなと・・。
只、前の役者との話題が、其れによって影が薄くなったことは良かったと思った。
此れで・・晴れて・・二人でゆっくりできると・・。
結局、マスコミは冴えない弁護士と女優の結婚という事でおさめたようだ。
邦夫は其れで充分だ。
そもそも、連絡先から・・結婚までやっと辿り着いたのだから・・上出来だ。
二人で食事をしながら・・夕子が。
「ねえ、落ち着いたところで。子供でも・・考えてみない?前の人とは無くて良かったけれど。貴方が亡くなったら、私一人で寂しいから・・ね?」
邦夫は、
「おいおい、今度は少し早めに自分を殺そうという物語?成程、役者だな。ああ・・しかし・・そう言えば、また欧州に行かなければならないんだった。よく分からないんだが・・?」
邦夫はそう言いながら、バタバタと手元の羽田発の航空機の時刻表を見だした・・。
「・・あらあら・・また逃げ出すの?」
「いや・・そういう訳では無いんだが・・?そう言えば、君、子供産めるの?よく分からないんだな女性のそういう事は・・?」
流石に夕子は大女優・・照れもせず笑みを浮かべると・・。
「・・前の人の時にはそんなこと考えなかったけれど・・何か不足でも?」
今度は・・キツイ冗談どころで・・済みそうもない・・。
Contactos a tiempo 邦題 予定通りの連絡先
女性は大女優、男性は弁護士だが、男性が欧州で仕事をしている時に女性は別の業界の男優と事実婚関係になっていたが、今度はその関係を解消するという。
弁護士である男性が立ち合い二人の清算をする。そうなると・・男女は再び接近遭遇となる。
大女優にはいろいろな出来事が付いて廻るが、マスコミの追っかけも激しい。