くちびるの結び
わたし、くちびるとくちびるとを結んでみたいとも想っている、
それが恋人のそれであったら とてもとても佳いと想うのだけれど、
それ、はやわたしに禁じられて了ったのでありますから、
せめて 真紅のrougeを、くちびるに拒絶の鎧と蔽わせるのです。
わたしの紅いくちびるはレザーの照り返し、硬き反映、
うぬぼれ? 濡れた硝子めく蠱惑 もしやほうっと薫らせてはいないかしら、
あなた、知ってはいなくって? どぎつい真紅は情欲煽るの、
わたしはわたしの身振に噴き炎ゆる火を、亦身振に秘めなおすのです。
そうして──わたしのくちびるは椿の花となりました、
透して──椿の花は清む管にするすると落ちて往きました、
されば上澄を逆光でもするように──花は水晶へ澄み往くのです、
祝福してくださいませんか? わたしはわたしのくちびるを、
ましろのアネモネの花畑まで墜落させられたのでした、結びつきの情欲を、
匿名の無個性の無辜の透明の淋しさの風景──死へ花剥けもしたのでした。
くちびるの結び