くちびるの結び

わたし、くちびるとくちびるとを結んでみたいとも想っている、
それが恋人のそれであったら とてもとても佳いと想うのだけれど、
それ、はやわたしに禁じられて了ったのでありますから、
せめて 真紅のrougeを、くちびるに拒絶の鎧と蔽わせるのです。

わたしの紅いくちびるはレザーの照り返し、硬き反映、
うぬぼれ? 濡れた硝子めく蠱惑 もしやほうっと薫らせてはいないかしら、
あなた、知ってはいなくって? どぎつい真紅は情欲煽るの、
わたしはわたしの身振に噴き炎ゆる火を、亦身振に秘めなおすのです。

そうして──わたしのくちびるは椿の花となりました、
透して──椿の花は清む管にするすると落ちて往きました、
されば上澄を逆光でもするように──花は水晶へ澄み往くのです、

祝福してくださいませんか? わたしはわたしのくちびるを、
ましろのアネモネの花畑まで墜落させられたのでした、結びつきの情欲を、
匿名の無個性の無辜の透明の淋しさの風景──死へ花剥けもしたのでした。

くちびるの結び

くちびるの結び

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-27

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