【連載】ヒトとして生れて・922

万田 竜人(まんだ りゅうじん)

第9巻の続き

022   ニュージランドで鳥の眼と虫の眼を獲得 

 今回のニュージーランド旅行もオークランドにおける夜がツアー最終
日の夜でもあり、新婚組のお祝いも兼ねて大いに盛りあがった。ホテル
側からも催しが用意されていて、次々とゲームが行われた。

 弁護士さんの奥様からは、クライストチャーチでパスポートが無事に
見付かったお礼にといって全員にケーキが配られた。ゲームの中で一番
の盛り上がりは、家内が新婚の方に向けて企画したゲームで・・・

 顎の下に挟さんだオレンジを、顎から・顎に・渡す場面で最終ゴール
の新婚組にオレンジが渡った時に、危うくオレンジが落ちそうになって
若旦那が花嫁を抱きかかえて、オレンジを守りきった瞬間であった。

 その晩は、部屋に戻るとテーブルの上にフルーツバスケットがホテル
からのプレゼントとして届いていた。そして、それぞれに風呂から出て
ベランダでくつろいでいると、ワインとフルーツでベランダからの夜景
を楽しむことで意見が一致した。

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 翌日の日本へのフライトは、天気も良く視界も良好で、機内から窓の
下をのぞくと、海上を、ゆったりと走るタンカーが見えた。
「はるか上空からなのにタンカーが大きく見えるわね」と、実物の船の
大きさには、私も家内も素直に驚いた。

 日本の産業の歴史においてと前置きをして、私は詩吟のように・・・

「母なる船からそこに築かれた技術力が基盤となって飛行機を育てあげ
さらに、自動車産業に技術力が転移して、国際的な競争力を確かなもの
にして行った」

「そして、その後は、船も飛行機も巨大化して進化を遂げ輸送力の拡大
に寄与して行った。自動車の分野においては、市場を世界に拡大させて
行き、第二次世界大戦前には想像すら出来なかったことが、現実の世界
で飛躍的に発展して行った」と、唱えたので家内はあっけにとられた。

 今回のニュージーランドへの旅で、多くの年長の方々から、私と家内
は大いなるパワーをいただくことになり、お互いの共通の将来展望につ
いても明確にビジョンを描くことができたと、同時に、私は年長の方々
の元気路線にも同乗することが出来た。

「ニュージーランドの風景には、ボクらの幼い頃の原風景のようなもの
があったよね」と、私が家内に語りかけた言葉通り、ニュージーランド
への旅において、二人にとっての原風景に似た状態で、共に、幼子体験
を含めてフラッシュバックできた感覚を共有できたことは、今後の二人
の生活や心の働きという面を考えたときに、とても良い体験であったと
考える。

 そして日本に向かう機内で思いがけない会話が交わされることになる。
「あの元気な奥さんたちの好奇心や行動力に触れて感じたことは、自分
たち向けにも、積極的な投資が、時には、必要ということよね」という
感想を聞かされ、帰国後、数日たってから、土曜日の朝に・・・

「あなた、これで思いっきり自分でやりたいと思うことをやってみたら」
「これ家計費からです」と、云って現金で百万円を渡されたことが、私に
とっては、全ての好循環の始まりであったような気がしている。

 私は、熟慮の上で・・・

「これからは自宅にも情報化の波は必ず押し寄せてくると考えてパソコン
を購入した」

 そして「社内における業務革新の旗振り役」の対象が、企業運営や企業
経営の領域に入ってきたことから・・・

「経営大学院と命名された商品名の教材を総量にして大きなダンボール箱
で二箱ほど購入、ビデオテープとカセットテープ教材を伴ったテキストを
活用し、休日になると猛烈な勢いで勉強を始めたのであった」

 そして、私は、この猛勉強を経て 「鳥の眼」と「虫の眼」という見方
(視点)を身に付けた。

◇ 鳥の眼という見方(視点)からは航空事業分野を国内主体の需要から
 海外事業を視野に置いたところの「国際的な事業に転換させる」ための
 企業革新の推進役として、活躍する道を切り拓いて行くことになる。

◇ 虫の眼という見方(視点)からは、新入社員として、純国産ジェット
 エンジンの量産設計に携わったときに、感じた、先人たちの天才的技術
 集団は「何故、ここまでバランスの取れたジェットエンジンを設計する
 ことが出来たのか?」と、いう大いなる設問について、異次元の世界を
 眼前にすることで、そのフォーカスを経て「答え」を得た。

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 それにしても、あのニュージーランドの博物館で対面した、零戦からの
「ショック・ウェーブ(衝撃波)」は脳内に深く刻みこまれたままである。

 私は日本において、けっして戦後という時代を終わらせてはならないと
同時に「不戦」の国であるという日本の理想はどこまでも貫く必要がある
ことをあらためて認識した。

 そして、この「不戦の誓い」は、個人にとっても重要であると考える。

 そして、あらためて地球の反対側のニュージーランドに展示された零戦
が存在する限り「戦後という時代に終わりはないのだ」ということを唱え
続けて行く必要があることを痛感した。

(続 く)

【連載】ヒトとして生れて・922

【連載】ヒトとして生れて・922

第9巻の続き

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-24

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