どこかの世界の十一月の夜に
あおい はる
映像のなかのきみは、いつもどこか、空虚。肺をやわらかくつぶすような、冬の空気を纏い、仮面をつけたひとが踊る。夜だ。にぎやかな街に対比して、しんだように眠る森の、みずうみのまわりで、こどもたち、歪む。ぼくは失った、半身であるノエルを想い、世界がいつまでもやさしいとかんちがいしている、無垢で純白なものに、一点の墨を投じるだれかを、すこしだけ恨めしく思う。月に行けたらな、と呟くと、美しくも儚い肉体をもつ、新人類の彼が、なにもおもしろくはないと吐き捨て、ぼくの肩口を、甘く噛んで、外は雨が降っていて、テレビはさきほどから、おなじニュースをくりかえしている。狂ったみたいに。
どこかの世界の十一月の夜に