黒い天使

僕は今日から中学3年生になった。だが、日常は何も変わらない。僕の数少ない友達とまた一年を明かすのだろう、そう思っていた。
新学期と共に、僕のクラスに転校生がやってきた。
小さな女の子でとても中学3年生とは思えないような子だった。
「私は高橋愛と言います。私は生まれつき目が見えないのですが、気を使わずに接して下さい。」と自己紹介をされた。
彼女は、僕の方を見て笑ってくれたように感じた。
僕はその瞬間が頭から離れずそれからずっとその子ばかりを見続けていた。
すると、「おい、小鳥遊聞いてんのか。」と隣から声が聞こえた。
「ああ、ごめん鷹柳。全然、聞いてなかったわ。」
「お前、最近変だぞ。何かあったのか。友達の少ないお前の親友だぞ。何かあれば話してみろ。相談ぐらいならのってやるぞ。」
「いいや、別に。」と僕はその場を濁した。
それから、その日はずっと高橋さんのことを見続けてしまっていた。
その日の帰り道、公園で困っている高橋さんを見つけた。
「どうしたの、高橋さん。」
「あなたは確か、同じクラスの小鳥遊君だよね?」
「僕のこと、わかるの!!」と驚いてしまった。
「私、目が見えないから声で人を判別してるんだよ。」
僕は少し嬉しかった。
「ところで、どうしたの?」
「帰り道を歩いて少しこのベンチで休憩してたら白杖がどこにあるかわからなくて。」
「これのこと?」
「そう、これ。ありがとう。」
高橋さんのその笑顔を見ると、顔が赤くなってしまった。
次の日から、高橋さんと一緒に登校するようになった。

次の日、僕は高橋さんの家へと向かった。
そうすると、丁度その頃高橋さんが家から出てきた。互いに「おはよう」と挨拶しあった。
それから、学校へ登校し授業を受け、帰宅する、といった生活を送って一週間が経過した。
今日も高橋さん一緒に帰った。すると、「今日は家に上がらない?」と言われた。
僕は焦った。いままで、彼女は愚か女友達すら出来たことがなかったからだ。
だけど、僕は「じゃあ、お言葉に甘えて。」と了承した。
僕の「お邪魔します。」と、高橋さんの「ただいま。」という声と共に、高橋さんの両親がお出迎えをしてくれた。その日は、ずっと高橋さんの家で喋ったり、遊んだりした。そんな日々が約1か月続いた。
そんなある日学校の廊下を歩いていると、教室から高橋さんの両親と担任の先生の会話が聞こえた。
「先生、実は愛は余命が残り半年もないのです。」
その言葉を聞いた瞬間、僕はその場に崩れ落ちた。
その瞬間以来、僕は更に彼女のことを意識するようになった。

それから約1か月後、僕は高橋さんと出かける予定ができた。心底嬉しかったが、彼女のことを意識しないことはできなかった。あの彼女の両親の言葉を今でもずっと引きづっていた。その週の土曜日、高橋さんと出かけた。少しでも元気でいさせたいため彼女の行きたい場所に連れてってあげた。
その日の帰り、僕と高橋さんは今日のことについて話しあっていた。すると、急に横で「バタっ」と彼女が倒れた。急いで救急車を呼んですぐさま病院に行った。病院に着くと医者からは「彼女はもう先が長くありません。遅くても今日明日には...」と伝えられた。
僕はとても悲しかった。すると、高橋さんが少し目覚めていた。「ごめんね、小鳥遊君」
その涙に隠れた笑顔はまるで黒い天使のようだった。
「何で高橋さんが謝るんだよ。誰も悪くないのに。
僕は君のことがあの日君が転校してきた時から好きだったのに。」
「ありがとう、小鳥遊君。」
そこから、高橋さんは息を引き取った。
ここで、僕は初めて誰かのために泣いてしまった。
そして、泣きながら僕は、「今日の思い出は僕と君の大切な思い出だから、絶対に忘れないから」と言って高橋さんとの別れを告げた。
その日は家に帰ってからも一日中泣いた。

黒い天使

黒い天使

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-19

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