摩周湖に魅せられて 6

陽子の閃きが冴える

更に報告したい仲間がいる。統子と千絵と桃子だ。一時は失恋同盟を結成したが今は夢のようだ。千絵も桃子も社員として働いている。互いに今は忙しく会う機会が少なくなったが三カ月に一度は会っている。そして今日がその日だ。
「みんな久し振り。元気にしていた」
統子が声を掛ける。陽子も千絵もそして桃子も何か話したくてウズウズしているようだ。
それを察した統子はニヤリとしてこう言った。
「ははぁ、三人とも彼氏が出来たでしょう。眼が輝いてるもの」
「流石は統子、大当たり」
そう言ったのは千絵だった。
「それは良かったね。仕事に恋に、やっぱり青春はこうでなくちゃあ」
「ところで統子、余裕ね。じゃ統子も彼氏が居るの」
「へっへへ、三ヶ月後に結婚披露宴の招待状を送るからね」
「はや!! もうそんな進んでいるの」
陽子は喜んだ。あの自動車学校で知り合い、その時は四人とも最悪の状態だったのに本当に良かったと心から思った。あとはもう四人とノロケ話で終わった。
陽子も今は仕事に恋に充実している。ただ喜んでばかりは居られない。異例の出世で主任になったからに、もっと頑張らないと。

これまで順調に仕事はしてきたが営業部として次の企画を考えなくてはならない。今度は店舗に負担を掛ける企画じゃなく、どんな商品を仕入れるか、或いは開発すると進める事になった。そうは言っても打ち出の小槌じゃあるまいし、振れば出てくると言うものじゃない。流石に困った陽子はリーダーであり恋人的存在でもある坂本に相談した。
「相談って何かな、君らしくもない」
「ここまでは偶然と言うか良いアイデァに恵まれましたが、流石に策が尽きた感じがして」
「確かに君の企画は驚くばかりだよ。期待されればプレッシャーを感じて当然だよ。悲観することはない。深く考えず少し頭の中を空っぽにしてはどうだ」
「空っぽ? それは良いかも。流石はリーダー」
「リーダーはよしてくれ二人きりの時は一成と呼んでくれ」
二人は親しい仲ではあるがまだ互いに下の名前で呼んだ事がない。
「それではカズナりさん……」
「なんだね陽子」
二人は暫く無言だったが坂本は陽子の手を握った。洋子そっとその手に力を込めた。

 現在、陽子は家から会社に通っているが、二十八才にもなって親と同居と言うのもおかしい、ただ一年前自殺未遂があったから、親がなんと言うか。でも今は社員となり給料も大幅に上がり家にも月七万渡してある。そろそろ大人して認めて貰いたい。
家に帰りリビングを見たら、何か小さなおもちゃが置かれていた。小さい物だがかなり古い。気になり洋子は夕飯を作っている母に訪ねた。
「お母さんこれなぁに、小さなおもちゃみたなの」
「ああそれね、お父さんが子供の頃に集めていたお菓子のオマケよ」
「へぇーなんでまた今頃、出して来たの」
「それがね、お父さんがスマホで調べたらプレミアが付いて高いのだと一万円もするそうよ」
「へぇこんなものがね。昭和の時代が平和だったのかな、こんなのが売れるなんて」
「時代は変わって流行は繰り返しものよ」
「流行は繰り返し……それだぁ~お母さん、お陰で閃いたよ」

つづく

摩周湖に魅せられて 6

摩周湖に魅せられて 6

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-13

CC BY-SA
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