スノードーム

2022/10/26

なんでもないような傷の数だけ
丁寧に大人になってあのひとは、
そういえばそんなこともあったかもといって笑っている、水色の蛇、そう、
あのひとは、蛇だったのかもしれないね
封鎖された洞窟の奥で、まだ静かにとぐろをまいている

無機質な文字列が確かに火傷しそうなくらいあつかったこと!
なぞったところから蘇るあれは、スワイプで消すように軽やかに
空気に消えて
それを、吸う人はもういないのね
安いスノードームの、すぐに空気が入ってだめになるあの感じが、
手のひらにざらついて残っている

今年の冬は去年よりきっとずっとさむいよ。
さむくなるだけ空気が澄んで、星がよく見える
爆発したあの星の欠片の上で、
あのひとの瞬きが起こす風が、頬をなでるころ
毎年少しずつ弱くなる信号にわたしたちは、
手を伸ばして、
それを識っている、わたしたちは!
(そこにいなかったけど、名前を書いた。きれいな名前だと思った)

100 年は無理かもしれないけど、あと 1 秒なら、
そんな風にして、生き繋がれる脈を奇跡と思っています

スノードーム

スノードーム

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-10

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