50cmの世界旅行

待ち合わせの場所で君は携帯をいじっていた

背中側からでも分かる気合の入った服装

普段はスカートを履かないからこそ

君の今の姿は可憐に目に映る

さりげなく肩に手を伸ばす

こちらを振り向く君

長いまつげ つぶらな瞳

筋の通った高い鼻 

ぷっくらとしたくちびる

うん 知らない人だ

君が平手を僕の頬にぶつけた瞬間に

僕の意識は西北西の彼方に飛んでいった

トルコでカッパドキアを見に行こう

ギリシャでパルテノン神殿を見に行こう

イタリアのナポリで青の洞窟へ行こう

スペインとフランスの国境でピレネー山脈を眺めよう

そうして世界を何度も回っていく

尻餅ついて戻される意識

床のタイルが僕の着地点

頬から熱が放出されるような感覚

南極で冷やしたはずなのにな、なんて言えない空気

一言何かを言われたのちに

彼女は背中を向けて立ち去った

50cmの世界旅行

50cmの世界旅行

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-09

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