50cmの世界旅行
待ち合わせの場所で君は携帯をいじっていた
背中側からでも分かる気合の入った服装
普段はスカートを履かないからこそ
君の今の姿は可憐に目に映る
さりげなく肩に手を伸ばす
こちらを振り向く君
長いまつげ つぶらな瞳
筋の通った高い鼻
ぷっくらとしたくちびる
うん 知らない人だ
君が平手を僕の頬にぶつけた瞬間に
僕の意識は西北西の彼方に飛んでいった
トルコでカッパドキアを見に行こう
ギリシャでパルテノン神殿を見に行こう
イタリアのナポリで青の洞窟へ行こう
スペインとフランスの国境でピレネー山脈を眺めよう
そうして世界を何度も回っていく
尻餅ついて戻される意識
床のタイルが僕の着地点
頬から熱が放出されるような感覚
南極で冷やしたはずなのにな、なんて言えない空気
一言何かを言われたのちに
彼女は背中を向けて立ち去った
50cmの世界旅行