広い家

 僕は夢の中で友達の家を訪ねていた。とても広い家だったので誰かと住んでいることは明白だったが、その姿は見えなかった。友達の姿も見えなかった。しばらく面倒を見てほしいのだそうだが、人前に姿を見せられないようで会うことは叶わなかった。もう一人駆けつけてきた友達がいたので、そいつと一緒になって心配していた。どうやら彼とは顔を合わせられるようで、友達と会話をするには彼を間に挟む必要があった。僕にはやることがなかった。とても広い家だったのでその分寂しさが増した。暇を潰せるものも少なく一人でいることが多かった。せめて晩御飯だけは作ってあげたくて、一人で買い出しに出かけてみた。スーパーまでは遠い道のりだった。その間に何を食べたいのかをメールで聞いても返事はなかった。数時間後に手ぶらで帰って来た時にはいつも以上にがらんとした家に思えた。これが最後だ。彼らとの最後の思い出だ。

広い家

広い家

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-03

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