幸福

 わたし さながら嵐のような暗く劇しい青春、
 険しく砕けながら生活してきたけれども、
 そいつには不断に夜の帳がシャッター降ろされて、
 わがみすぼらしき背 大いなる侮蔑と揶揄が張りついてる。

 わたしはそれですべて佳しと想ってはいるが、
 しかし、淋しさという深みの叫びもまた昔と変わることなく、
 唯 昔の泉の揺蕩い あたたかみを想い起こし、
 おや あれは果たして幸福だったのかしらと訝るのだった。

 されば一条の糸を手繰らせるように す、と
 わたしは淡いとおい はや不在の光を掬おうとするが、
 それは不在としてすべてのわたしに満ちているがため、

 嗚 わたしは幸福であったのだ、と確信をする。
 わたしの不幸は不在のすべてである、しかし、
 すべての不在が幸福の証拠であるからして、万事佳しである。

幸福

幸福

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-10-31

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