十月病

 みんな、という集合体のなかで、埋没してゆくだけの真夜中。あのこのからだの内側を蝶が飛ぶ。ゆびおりかぞえて、星の、無限にあると思っていた生命のひとつひとつが、ついえてゆくのを、ただみていることしかできない。にんげん。星の大部分を占めている、生きもの。七日間で、あたらしいいのちがめばえて、さみしがりだったあのこが、いく。透明な血を流して。
 おはよう、とおなじ調子で、あいしている、と云う。
 せんせい。
 わたしのセーラー服のスカーフで、絞めてあげたい。

十月病

十月病

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-10-25

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