私の小説作品ダイジェスト

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 私の小説作品ダイジェスト

 私の書いた小説をあらすじで紹介します。

 これまで本サイト様で、私の作品を掲載してまいりましたが、諸般の事情により、現在、公開していません。いつの日か、また公開したいと思っています。
 恐れ入りますが、再投稿するまでの間、興味のある方は、小説サイト、ノベルデイズ、エブリスタ、ステキブンゲイ、縦書き文庫、野いちごなどをご覧ください。

 美人画廊(令和版)

 この小説では英国世紀末絵画、ラファエル前派の絵画がたくさん出てきます。また、世紀末絵画について考察している場面もあります。こういうシーンはあまりウケないだろうと思います。
 登場人物 河田奈々未 吉井孝夫

 あらすじ・・・奈々未と愛理は画廊を相手に版画の詐欺を働いていた。あるとき、奈々未は詐欺を持ちかけた新堀画廊のバイトに雇われる。画廊は版画の販売もするが、英国世紀末のラファエル前派の版画を展示し、無料で見せている。画廊の社長吉井孝夫は美人の奈々未に惚れこんだようだ。画廊の向かいにある美容室のオバさんはおしゃべり好きなのだが、あろうことか、甥というのが警官だった。
奈々未は陶器や版画の展覧会でツーショット写真を撮らせて売り上げを伸ばす。
 画廊でラファエル前派の愛好家の集まりが開かれ、奈々未は映画監督から映画に出演しないかと誘われる。
 奈々未はこれ見よがしに太ももを見せたりして吉井孝夫を挑発して楽しんでいた。ところが、あることをきっかけに孝夫と半同棲を始める。
 新堀画廊はオークションで貴重な絵画を購入した。高く売るにはそれと対になったもう一枚が必要だった。奈々未は詐欺仲間の愛理と組んでその一枚を手に入れるが、その最中に奈々未の黒歴史がバレそうになる。
映画の撮影が始まり、奈々未も出演者と並んで写真に収まるが、以前、奈々未が詐欺で大金をだまし取った男が現れ、奈々未に向かって詐欺だと叫ぶ・・・

 美人画廊より抜粋・・・

 公園の横を過ぎたところで車はスピードを落とした。運転席の水上愛理が「すぐそこ、美容室の向い側よ」と左側を指差す。河田奈々未はその方向にチラッと視線を送った。
 くすんだ緑色のドアが目に入った。この店だ。
 愛理は次の角を左折し、もう一度左に曲がって、その先にあるアパートの前で車を停めた。南欧風の洒落たアパートだ。敷地内の専用駐車場に車を入れる。無断で停めるのだが、ほんの五分くらいだから見咎められることはないだろう。
 二人は車を降り、後ろの座席に置いてある版画の入った箱を引っ張り出した。版画の箱は全部で四つ、水上愛理がそのうちの二つを持ち先に立って歩き出した。奈々未も両手に箱を抱えて続いた。
 すでに愛理が店の下見をしてあった。下見というより「仕込み」と言った方が当たっている。一昨日、愛理はこの先にある画廊に行き、ラッセンやブラジリエの版画を買いたいのだがと持ち掛けた。画廊の店主は、生憎だがどちらも置いてないと言った。
 それでよい。これから売りにいくのである。奈々未と愛理が持っているのはラッセンとブラジリエの版画だ。
 通りに出るあたりで愛理は、うまくやってねと言い残し、箱を四つとも奈々未に託した。愛理が先に帰ったのは、奈々未と二人でいるところを見られてはいけないからである。


***

 ウトパラの蓮
 登場人物 秋山達也 那須川花恋 住吉里加

 チベット密教、曼荼羅など、宗教を題材にした小説です。特定の宗派、宗教への勧誘、誹謗中傷ではありません。この小説では仏教について延々と述べている個所があります。高校の教科書よりは難しいレベルなので、おそらくほとんどの読者の方は退屈されると思います。また、チベット密教の壁画では仏や菩薩が女性形で表され、なおかつ裸体で描かれているものも見られることにも言及しております。仏や菩薩が女性形で裸体ということは、日本では考えられないことです。さらに、守護尊という男女の神が抱き合っている壁画が重要なテーマになっています。

 あらすじ・・・秋山達也は大学で福祉を教えている。あるとき、福祉活動の見学に行った公園できれいな花壇を見かける。さらに学生を引率して参加した公園でのバザーでも同じような造りの花壇を見る。秋山は、その花壇を造った住吉里加と知り合い、彼女の家に誘われる。里加はトールペイントを教える傍ら絵画も描いていた。
 秋山の妻、美由紀はヨガ教室を経営しているが、受付の女性が休暇をとっているのでその代わりに秋山が働くことになった。壁には曼荼羅風の絵画が掛かっていて、それが住吉里加の作品だった。
 さて、秋山は里加に招待されたが、高額商品を売りつける集団ではないかと思い、大学の同僚で宗教学を専門にしている迫田昇に相談する。迫田はカルトではないと断言した。しかし、住吉里加が曼荼羅に詳しいところから、チベット密教に関連しているのではないかと言う。後期チベット密教では性行為を修行に取り入れていたので気を付けろと忠告される。
 研究会の会場を下見に行った帰り、秋山は那須川花恋という女性を助ける。ところが花恋は男に声を掛けてホテルに行こうとしていた。秋山は花恋を今の境遇から救い出そうと、ヨガ教室の仕事を紹介する。
 秋山は住吉里加の家を訪れ、彼女がチベット密教に基づく絵画を制作しようとしているのを知る。そして、里加の描く絵画のモデルに花恋を採用できないかと考える。里加が描こうとしている菩薩像は裸体の女性の姿をしていた・・・


 ウトパラの蓮より抜粋・・・

 ここは横浜のみなとみらい地区にほど近い画廊である。
 今日の展示を終え、この時間はすでに閉店していた。隣のビルの灯りに照らされて店内の様子は薄ぼんやりと見えている。
 画廊の入り口近くの壁に掛かっているのは曼荼羅の水彩画だ。いずれも幾何学模様で、蓮の花のような文様も見られる。色彩も鮮やかだ。
 奥に目を移すと、そこには二点の水彩画と、習作のデッサンが掛かっている。水彩画のうち一点は緑色の薄い衣装をまとったターラー菩薩像で、もう一点は仏様がすべて女性の姿で描かれた曼荼羅である。
 ターラー菩薩像は羽衣のような衣装を肩から掛けてはいるが、ふくよかな胸の膨らみがはっきりと見て取れる。衣装の下は素肌で、首飾りの金具でバストトップは巧みに隠されていた。肩の辺りには蓮の花が描かれ、右手には青いウトパラの蓮を持っている。このターラー菩薩は女性の菩薩であり、観音様の救済から漏れた人を助ける役割を担っている。ウトパラの蓮はターラー菩薩の象徴だ。
 仏様がみな女性の容姿で描かれた曼荼羅は、大日如来も阿閦如来も裸体である。こちらは胸を覆い隠す物は何もない。
 習作のデッサンは裸で抱き合う男女の守護尊像だった。守護尊はあまり馴染みがないが広い意味では仏様の仲間である。
 裸体の菩薩に女性形の大日如来。いずれも、仏教画としては異例の作品である。これらの菩薩や仏様が描かれたきっかけは公園の花壇にあった・・・

 秋山達也が最初にその花壇を見たのは四月の半ばのことだった。
 神奈川県の県央にある海老名市、その駅前広場はいつでも賑やかだ。ここは相鉄線と小田急線、それにJR相模線が乗り入れている。駅前は、ビナウォークといって商業施設の入ったビルをぐるりと取り巻く回廊がある。そのビルは意匠の凝った造りで、赤や青に塗られた三角屋根があったり、大きく飛び出した出窓もある。広場にはトロッコ列車が走り、七重塔まで建っている。この広場で人気ミュージシャンのコンサートを開いたり、商店街のお祭りもおこなわれる。
 朝の九時半なのでまだ人出は少ないが、それでも、すでにビルの開店を待つ人が入り口に並んでいた。
 秋山は改札を抜けると商業施設の方には向かわず、駅前を右に折れた。この道は市役所に通じている。しばらく歩いてまた右へと曲った。ここまで来ると、駅前の喧騒とは打って変わって住宅地になり、ところどころ畑も点在していた。
 ベビーカーを押した母親を追い越した。おそらく行先は同じ公園であろう。まもなく、「公園遊び」と書いた幟り旗が見えてきた。


***

「新編・辺境の物語」

 あらすじ・・・架空の時代、1450年頃の物語で、国境を隔てて向かい合う二つの国、バロンギア帝国とルーラント公国があった。
 バロンギア帝国、シュロスの城砦には月光軍団が、ルーラント公国、カッセルの城砦にはカッセル守備隊がある。シュロス月光軍団は来訪する王宮の親衛隊ローズ騎士団との間に確執を抱えていた。カッセル守備隊には、左遷されてきた副隊長補佐、正体不明の指揮官エルダ、変身能力のあるレイチェルがいた。
 この両者が戦場で戦い、カッセル守備隊は城砦に凱旋し、指揮官のエルダは司令官になった。一方、シュロスに帰り着いた月光軍団にはローズ騎士団というあらたな試練が待っていた。さらに、カッセルの城砦にはバロンギア帝国の偵察員ミユウが潜入していた。
 カッセル守備隊には王女様が加わっていたのだが、エルダに代わって赴任してきた司令官によって、王女様は窮地に立たされてしまう。
 さて、話は現代に変わる。中世の城壁に使われていたレンガの研究をしているフェルナンドの元へ、金属部品が食い込んだレンガが持ち込まれた。どうやら500年以上も前のレンガらしいが、ある夜、そのレンガは自分の物だと言う女性が現れる。

 新編・辺境の物語より抜粋・・・

 ローズ騎士団の一行が到着したチュレスタの町は賑やかだった。宿はどこも満室で三軒続けて断られてしまった。
 バロンギア帝国州都軍務部所属のスミレ・アルタクインは、温泉街の外れまでやってきた。そこには王宮から到着した荷馬車が駐屯していた。六台ほどの馬車が見える。情報によると騎士団の着替え、ワイン、菓子類などが積まれているのだった。ところが、馬車の見張り番は車座になって酒盛りをしているではないか。こんな緊張感に乏しいことでは困る、荷台には州都の金庫から運び出された金貨や銀貨も収められているのだ。
 ローズ騎士団の視察旅行には想定外の費用がかかっていた。チュレスタに宿泊するのに合わせて、州都の軍務部にも追加の費用を届けるようにとのお達しがきた。無理難題ではあるが、王宮の親衛隊からの要求では断ることはできなかった。
 そこで軍務部では調査のための監察官を派遣することになった。この役に指名されたのがスミレ・アルタクインだった。
 監察とはいえ、王宮の親衛隊に対して金銭の使い道の是非を指摘するようなことはできない。あくまでも動向を「観察」して報告するだけだ。なにしろローズ騎士団はどこにいても目立つので、否が応でも目に入って「観察」ができる。
 チュレスタに宿泊したのち、ローズ騎士団はシュロスの城砦へ向かう予定になっている。
 スミレが監察役に応募したのは、シュロスには士官学校の先輩のナンリがいるからでもある。ナンリは優秀な先輩であったが、士官学校を卒業後は辺境の城砦に勤務を希望した。お互い辺境州にいるものの会うのは久しぶりだった。

 チュレスタに来てみれば多額の費用の要求も納得した。隊員と世話係など三十人ほどだったが、宿屋を十軒も借り切っていたのだ。おかげでスミレは今夜の宿がまだ見つかっていない。
 そういえば、温泉街の通りで三人組の女を見かけた。近くで見たのではないけれど、三人が着ていたのはバロンギア帝国の軍服か、あるいは工兵の作業服のように見えた。キャアキャアと騒いでいたので、兵士ではなく、まして、騎士団を迎えに来ているのではないことは明らかだった。それでも、軍服が横流しされているとしたら、それはそれで問題だ。
 三人は客引きらしい女に声を掛けられて一軒の宿に入っていった。運よく宿が見つかったのか、あるいは下働きにでも雇われたのだろう。それより、今夜泊まるところを見つける方が先決だ。スミレはマントをしっかり羽織り、フードを被り直して宿を探すために歩きだした。

***

 お笑い 歌舞伎『猛牛巴御前』

源氏と平家の合戦、巴御前が平家と一戦を構える、まさにその時に、日本シリーズ「近鉄対広島」が絡んでくるという話。近鉄は源氏、広島は平家に見立て、一点ビハインドの九回の裏、近鉄に巡って来た無死満塁のチャンス。だが、ここに立ちはだかる赤ヘル軍団広島の江夏・・・

猛牛巴御前より抜粋・・・

獅子丸「先ほど注進が伝えるところによれば、先発は広島が山根、近鉄は鈴木啓二を立て火ぶたが切って落とされました様子。広島に二点先制されるも、近鉄猛牛軍団の平野が同点本塁打を放って二対二の同点に追い付きました」

若鷹丸「しかるのち、広島に水沼の二点本塁打で勝ち越されたものの、すぐさま近鉄猛牛軍団も羽田の巧打で一点を返し、ただいま七回を終わって三対四と一点差でございます」

球納言「ううむ、一点勝ち越されておるとは猛牛軍団の劣勢じゃな。しかも終盤か。これはいかん、なんとか猛牛軍団の反撃が見たいものだ」

巴御前「球納言様には、源氏方、近鉄猛牛軍団を贔屓し応援くださるご様子」

(球納言はとたんに砕けた口調になる)

球納言「そりゃあそうでんがな、ここで近鉄猛牛軍団に勝ってもらわなあきまへん。広島にはもう一人の球納言が応援にいっとるでな、お互い出世が掛かっとるんや。球納言の位階は従三位下でっせ、知っとるかいな公卿、殿上人でおます。そやさかい、源氏方の近鉄が勝てば、わいは大納言、右大臣も夢やない。けどな、平家方の広島が勝ってみいや、法皇様の逆鱗に触れ、下手したらこっちは島流しや。そうなったらどないすんねん」

巴御前「ははっ、球納言様のためにもここは必ずや形勢を逆転し勝利を掴んで・・・」

球納言「巴御前、いや、巴はん、ここは河内や、あんたなあ、木曽の生まれか知らんが、ここが勝負の分かれ目や、郷に入っては郷に従え、大坂弁でいったれ」

巴御前「そうでっか、ほな、いきまっせ。なあに、一点負けとっても勝負はここからや。見てなはれ、自慢の『いてまえ打線』が爆発しよるで。広島鯉軍団、しばいたろか」

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  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-10-24

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