闇を歩く

夜道を歩く
聞こえない足音に
後ろから大きな槍で左胸を一突きに やられるのではないかと
不安に駆られる

いつも同じ道を歩いている
それはまるで出口の分からない方向音痴
神隠しのように惑わされる運命の道
自分の足で歩いているのに

街灯の光がとても煌々と輝いているが
うつむいて歩くから
その灯りに気づかない
それよりも自動販売機が明るくて

誘惑が光にある
麻痺している
引き寄せられる
街灯に群がるように

寄り道はその足を止める
暗闇の中 
ひとり あなたは立ち止まる
好きなものを見つめる目

暗い道は静けさを引いている
その静けさは孤独を連れている
誰もいない道は自分の速さで歩くことを教えてくれる
酔って 歌って 軽やかに

必ず足は家路を歩く
恍惚の光は灯りを辿って進んでいく
そうして小さな旅路を終えていく
あるときは 夜風にあたり
あるときは 雨にあたりながら

夜道は暗い方が良いのだ
でなければ 夜道は月明かりを頼りにできない
月明かりは微かに霞んでいるのが良いのだ
でなければ 月の美しさなど誰も唄わない

夜道は光のありかを辿る道
踏切の赤 信号の青緑
途切れ途切れのネオン ときおり車のライト
それぞれに色がある

上を見上げて歩くことが
何かの前兆に見えてしまうのなら
あなたは夜道を歩くのを控えた方がいい
恐ろしい夢を見てしまっているからだ

夜道を歩く
ふとあの人の顔を思い浮かべながら

夜道を歩く
ぐるぐると光の渦に巻き込まれて

夜道を歩く
静かで美しい無音を聞いて

闇を歩く

闇を歩く

ひとり歩く夜の道。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-10-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted