か わ る
あおい はる
こわいくらいの、心臓の音。網膜を焼く、赤と、神経をざらつく指で撫で上げるみたいな、あのひとの行為。陰鬱さを晴らすために、もう、自由に空を飛べなくなった蝶の翅をもぐ、かれの残酷さ。こわい。幽霊よりもこわいのが、いきているにんげんって、よく言うよなぁと思いながら、いま、この瞬間に感じる、さまざまな大きさの、あらゆるこわい、という感情を、忘却するために、カレーライスを食べたあとの、ぎゅうぎゅうづめの胃に、さらに、チョコチップスコーンをあたえる。夜。
(ほんとうに、夏は、ねむってしまったの?)
すぐそこで、秋が、ねぼけまなこをこすり、あくびをし、だれかれかまわずに、おはよう、と微笑んで、ああ、夏はとうとう、いってしまったのだと突きつけられたとき。わたしはすこしだけ、無垢になれた。
か わ る