morendo

写真という遅効性の毒を
一番みぢかなところにおいておいて
たとえば 棚の上の本と月との隙間、とかね
手元で見つめていると
夜の鼓動が飲み込んでしまう
僕の心臓は動く morendo
僕の肺は秋のにおいを求めてる

チェキフィルムの中の君の横顔は
本当はもう生きていないのと同じだ
今日はいつ眠ったの
写真の中では
まばたきなんてしない

写真を見ていると君を殺してしまいそうになる
記憶の中の髪のにおいが、肺にかすかに残ったままで
君の虚像に愛の上書きをしているという孤独

morendo

morendo

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-09-23

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