morendo
谷崎あめ子
写真という遅効性の毒を
一番みぢかなところにおいておいて
たとえば 棚の上の本と月との隙間、とかね
手元で見つめていると
夜の鼓動が飲み込んでしまう
僕の心臓は動く morendo
僕の肺は秋のにおいを求めてる
チェキフィルムの中の君の横顔は
本当はもう生きていないのと同じだ
今日はいつ眠ったの
写真の中では
まばたきなんてしない
写真を見ていると君を殺してしまいそうになる
記憶の中の髪のにおいが、肺にかすかに残ったままで
君の虚像に愛の上書きをしているという孤独
morendo