根で俟つこと、失明

ネモフィラ・ブルーの友へ

此処は穢れた路地の裏、狂気も惑溺する場所です、
打ち棄てられた暗みたち、煙の如くに往き着く処、
それ等 憎悪も嫌悪も徹りこし、見向きもされない者どもの、
吊られた首すらぶら下がる、世の暗み 掃き溜めと抛られる廃墟です。

扨て 其処を漂流してきた詩人がおりました、根で俟つ詩人でありました、
淋しいほどに澄む眸をしておりました、世の明るみの熔けこんだ、
硝子珠さながらのそれでした。打ち棄てられた青玻璃が、
陽を一途に射すように、淋しい魂の歌う優しさを、歌う詩人でありました。

かれ独り 誰も知らない讃美歌を、霧消えいる声で歌います、
幾星霜の苦痛と苦み、一刹那で昇らす如く、かのひとに捧ぐ鎮魂歌です、
淋しいほどに澄む眸をしておりました、失明にもまた似ていました。

ありとある明るみを砕き抱き、哭きながら、暗みの炎を廃墟に放つ、
すれば景色は幻惑に剥かれ、真白の翳がどぎつく光り──暁失墜した失明。
詩人の視力は暗みを徹す、一途を背負う虚無徹す──失明の眸の滅びの澄明。

根で俟つこと、失明

ネモフィラ・ブルーって僕の詩の形容詞にしたかったのに友達の代名詞になっちゃった。

根で俟つこと、失明

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-09-21

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