走る孤独

息を止めて約十秒 暗い革靴を睨みつけて
目を瞑りそうになるけど 僕は戦っている

指を重ねた電流が世界と繋がって
海に飛び込んでそのまま沈むように
哲学で武装した船を漕いだ

垂れ流される涎とアナウンス
喪失した二十一グラムの自我と
真っ二つの交感神経

光に傷付けられた男は単純だから
二の腕の柔らかな温もりで立ち直り
白衣のお医者さんは不要
世界は平和に近づくのだ

消費される文字と性別
N極とS極の届かない手
開け放たれた窓から野獣が顔を出すから
瞼は生真面目にお辞儀する

吹き溜まる数字と時計の砂塵
干からびた白地図を惰走する列車
無垢な顔して指一本で人を傷付ける人
二本でサッカーする人
二人集まれば零本でミサイル爆撃さ

ラッパを吹きならせ!

轟音でかき消すんだ
耳栓越しの雑音から目を背けて
四角いLEDに世界を感じて
僕はまた一人になる

走る孤独

走る孤独

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-09-18

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