走る孤独
息を止めて約十秒 暗い革靴を睨みつけて
目を瞑りそうになるけど 僕は戦っている
指を重ねた電流が世界と繋がって
海に飛び込んでそのまま沈むように
哲学で武装した船を漕いだ
垂れ流される涎とアナウンス
喪失した二十一グラムの自我と
真っ二つの交感神経
光に傷付けられた男は単純だから
二の腕の柔らかな温もりで立ち直り
白衣のお医者さんは不要
世界は平和に近づくのだ
消費される文字と性別
N極とS極の届かない手
開け放たれた窓から野獣が顔を出すから
瞼は生真面目にお辞儀する
吹き溜まる数字と時計の砂塵
干からびた白地図を惰走する列車
無垢な顔して指一本で人を傷付ける人
二本でサッカーする人
二人集まれば零本でミサイル爆撃さ
ラッパを吹きならせ!
轟音でかき消すんだ
耳栓越しの雑音から目を背けて
四角いLEDに世界を感じて
僕はまた一人になる
走る孤独