承認欲求
微かな春の匂いは毎年訪れる
去年も今年も同じように時間が消費されて
それでも同じ時間は存在しない
いつだって何かが変わっている
そういう変化の中に僕らの言葉も加えてほしくて
白い紙を何色かに染めて指を滑らせる
伝えるための手段
承認欲求。
「あなた」なんて都合よくいないし
満たしてくれる人間もいない
作品はあくまで作品だから人を生まない
それでもこの世界では表現することが許された
承認欲求。
作り手の存在がある意味正しい行く末で
僕らみたいな社会不適合者も社会に招かれる
そんな広い海の中で溺れながらも
僕は形を保ち続けることを辞めない
承認欲求。
自身の生存権を得る道すがら
窓に映る熟れた果実
シンナーとアルコールが混ざり合い
誌面に子供が大きく映ったのを見た
僕はそして宿願を果たしたのだ
承認。
承認欲求