二度目の春
例えばある始まりの日
苦しい時代を乗り越えて得た出逢いは
終わりもまた連れてくる
形あるものには終わりがあるように
形が無くても終わりはあるんだけど
そのときは永遠のように感じたんだよな
感じていたかった
ぐちゃぐちゃに散らかったあの部屋も
今は懐かしい思い出の中だけ
僕の部屋だって片付いてしまって
思い出の欠片も残されていないんだ
幻だったのかな
むしろそうだったらいいのにな
過去の幸せなんて消えてしまえ
今の不幸を際立たせる記憶たち
それらの消滅を望むには
それらは大きくなりすぎた
記憶を消すことなんてできないから
そうして寒い部屋から眺めた一本の枝垂桜
破裂しそうなほどに蕾が膨らんでいる
一年前にどんな気持ちで眺めていたのかなんて
もう忘れてしまったよ
だけど忘れたいことは忘れられない
だったらこの記憶も連れて行こう
一人の部屋で話し相手にでもしてやろう
気付いたら蕾が一つ開いていた
一人の人間の苦悩など知りもしないでさ
今年もまた、いつかと同じ春がやってくる
二度目の春