魂と酒と魔女?
魂と酒と魔女?
お店も古めかしく、町にひっそりとあるバー。
ママは魔女?オネエ?別世界の人?人間離れした変わったママがそこにはいる。
今日もママの気まぐれな一杯が注がれる。
「いらっしゃーい」
「ほら、入りなよー」
「こんな近所にこんなお店があったんだね」
「バーなんて入ったことないし、ちょっとここ怖そうな雰囲気が……」
「ママ、三名でーす」
「待っていたわよ。そろそろ来るかと思ってね、はいこれっ」
「みゆ、予約してたのー?」
「してないよ?」
「噂で予言の魔女と呼ばれているのは本当だったのかも!」
「魔女?まさか!」
「どうかしらね。魔女、男、女、次元、私にとって全てどうでもいいわ。大事なのは……まぁ、まずはこれを一杯飲んでちょーだい。話はそれから」
「いただきまーす」
「おいしーい!って、ここはどこ!?」
「効き目は十分ね。あなた達が飲んだものは、あなた達の前世の記憶を呼び覚ますもの。現在は、普通に考えて過去、そして現在、未来とつながっていくものだけれど、そんなのは関係ない。未来から過去現在もありえる。時間の流れ、時間軸、普段は干渉できないようになっているだけなの」
「えっ!?」
「だから、バーの中であってそうではない場所、あなた達が知りたい答えを教えてくれる場所に連れていってくれるわ」
「何か答えを求めてきたのよね?」
「まぁ、そうですけど、そこまでじゃないというか……」
「今までの人生、まだ25年程だけど、うまくいってないよね」
「特に私達男運ないよね」
「そう、その答えは、遥か昔、いや未来に答えがあるわ。さぁ、息をはいてー、深くすってー、はいてーすってー……」
いつの間にか意識が自分ではなく、遠くへ遠くへ、そこには小さな女の子が外で遊んでいる。
「ちょうちょさーん、まってー」
「いちか、あぶなーい!」
お葬式
「あまりにも早すぎる、いちかー」
「おぎゃーおぎゃー」
「うるせーな、だまってろガキ」
「おぎゃーおぎゃー」
「何してるのあなた」
「飯食わせてやったんだよ」
お葬式
「あまりにも早すぎる、いちかー」
「そう、あなたたちはいちかの生まれ変わり。あまりに早くに死んでしまっているなら、人生経験があまりにも少ないのよね。ひどすぎる親に生まれてしまったり。必要なのは愛ね。」
「愛!?」
「色々大人の事情?調節の云々で魂が3つに砕けたの。新しい人生を歩めるように。だから、まだ赤ん坊な訳ね。三度目の正直?まずは大人になるまで生きてこれたことに感謝よ。自分の価値を自分で下げない。無意識の内に魂が弱いから、年上の魂に食われちゃうのよ。狙うなら私くらいの長老級か、同じ赤ん坊魂?下手したらその辺の赤ちゃんの方が魂経験豊富な子もいるからねー(笑)」
「えー、私達もう若くないし、婚期遅れちゃう。」
「大丈夫よー。ちゃんといい人は必ず現れる。ちょうどいいわね、ここで働かない?経験が浅いんだから、ここで色んな人生を見ていくといいわ。」
「あれ?しおり?ゆい?」
「帰るべき場所に帰ったわ。砕けた3つの魂と言ったわね?3つに分かれたものはなかなか1つにはなれないけれど、砕けたものは元に戻せばいいからね。じゃあ、いちか、あなたの人生を取り戻していくわよー。」
みゆは、人格障害をおこしていた。
これは他の人からみた私。
私はちゃんといるし、しおりもゆいもちゃんといた。魂が別々に別れていたのではなく、砕けていただけ。
ママは本当の問題を見つけて解決してくれた。
何年も砕けていたのには理由があって、それぞれが生きていくことで、若くにして亡くなってしまう世界線からそれたのだ。
1番必要だったのは自分への愛。
しおりとゆいはいつも自分の心にいる。
自分を見失っていて、相手に求めるだけではだめなのだ。
これから本当の私の人生が始まる。
魂と酒と魔女?