九月の夜の刹那

 あまのさんのとなりでねむるのは、しろいくま。わたしたちは、どうにもこうにも、もう、腐ってゆく運命らしくって、えらいひとにも、お金をたくさん持っているひとにも、どうしようもできないみたい。森のなかにつくられた、えらばれたひとしかはいれないお屋敷では、きょうも、いやなことはぜんぶ忘れてしまおう、という名目のもと、むだに華やかなパーティーが行われているそうで、わたしが、パーティーって、と鼻で笑うと、あまのさんは、でも、にんげん、精神を病まないためには時に、現実逃避もひつようだよと言って、ねむっているしろいくまのからだを、撫でる。ふうん、と思いながら、わたしは、つめたいカフェオレを飲んで、テレビの、バラエティー番組の、だれかの恋愛模様の再現ドラマを観て、むかし好きだったひとのことを、ふと思い出したりしている。ドラマの内容はいまいち、あたまにはいってこないのだけれど。

九月の夜の刹那

九月の夜の刹那

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-09-16

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