疑いのユートピア
ある一人のひとだけを愛するというのは、野蛮な行為だ。他のすべての人々への愛を否定する行為だからだ。ただ一人の神への愛も同じようなものだ。
(フリードリヒ・ニーチェ『善悪の彼岸』)
愛が困難なのはそれが苦痛だから。でもわたしはそれを、愛を、苦痛とも困難とも感じなくなってしまった。わたしは何も感じなくなってしまった。苦痛を伴わない愛が愛と認定されないのなら、わたしの内で静かに息をしているこの青い焔は何?信じることが愛?違う、愛は、愛とは疑うこと、病的だと思われるほど疑いつづけることに他ならない。すべてに疑いをかけろ。宇宙を拡げろ。疑うことほど宇宙的な行為はない…、わたしはわたしの苦痛を疑いたかったから疑った、疑い尽くすことはできないと判っていても疑いつづけた、それをしているわたしは確かに愛だった、確かに生きていた。生きていたんだ。
星一つない夜空に見惚れた瞬間から本当の孤独が始まる。
疑いのユートピア