老女アリスの約束
青津亮
Twitterで僕の詩が好きだと言ってくれた、話したこともないひとへ。
睡る水晶の守護──幾星霜の瑕を生きぬいた、
老年のアリスは 今宵も亦、炎ゆる真紅のロリヰタを着付する、
嗚 うら若き頃、どぎつく少女性が映え立昇るようだったそれが、
いま しんと紅い彗星曳くようなしずけさ、それは一つの風景。
老女の眸は青春の不連続性に照り燦き、
星々との晩年の連続性に 月影をまるで沈ませているよう。
「わたしたちは約束をしたね」 と──
壮麗な少女衣装、薔薇色のロリヰタへ語り掛けるのだった、
「わたしの『わたし』を、ぜったい裏切らないということ」
せつな──するすると真紅の少女服は滑りおち、
老年アリスの、世にもまれに磨かれた背骨がさらされる、
「雪の衣装を背に負ったあの頃、ニ十歳、
わたし 幾たびも約束への守護の意思揺らいだわ、
だから貴女を纏ったの。少女にだって、Dandyismはあることよ」
老女アリスの約束
気づいてください。僕はほんとうに嬉しかったのです。