九月の打ち上げ花火
理科室にいる、きみの、肉体が散る瞬間は花びらが舞う、その光景に似ている。季節の、あるおわりに、やさしいだれかの歌声を添えて、わたしたちはシフォンケーキをたべて、愁い、悼み、浸り、そして、つぎの、あたらしいはじまりがくれば、おわったことは、なかったこととなる。街のかたすみの、博物館に、あのひとたちは眠っていて、標本箱は、いつも、空きがなく、わたしたちはまだ、そこには入れない。きみが、理科室の床につくった、きみ、という欠片の山に、ふれる。やわらかさと、なまぬるさと、まとわりつく感じと、胸の内側を丁寧に突き刺してくる殺意めいたものが、なんとなく心地よいなあと思ったとき、わたしの恋は、はじける。
九月の打ち上げ花火