晩夏の幻

 ララ。骨まで焼くような灼熱の夏は、あきらかな終息をはじめている。
 わたしたちがみていた十四時は、むなしいくらいにからっぽで、その表皮の裏で、腐っていたのは生まれたときから清純なものだった。だれもが、うつくしい花を愛でているあいだに、からだのなかの、濾過できない澱みが、透明な炭酸をも汚して、それでも、無垢になりたい。
 真昼の月に祈る。ララが、わたしいがいの生命体を、裁かないために、やわらかな糸で、くちびるを縫いあわせて。

晩夏の幻

晩夏の幻

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-09-06

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