クリスマスの奇跡 =クリスマス・イヴ=

僕は真っ白な中にいる。

とても白くて冷たい、そんな空間。夢のなかなのだろうか?

一人寂しく縮こまっている僕はとても惨めだ。


上も下も右も左もなんにもわからないこの空間で夢なら早く冷めてくれ、そう思った。

1秒後だったか、1時間後だか、ソレ以上だかはわからない、でもとても僕には長く感じた。

ソコに、黒い穴が開いたのだ。でも、ガラスのようなもので覆われていて、落ちることも何にもできない。

覗きこんでみると、ソコには惨状が広がっていた

==================================

 そうだ、あの日僕は事故にあったんだ。

雪の降る、聖夜の夜。僕は約束に間に合うために必死だった。冬なのに汗だくで、防寒で巻いている

マフラーが、とてもうっとおしく感じるほど、走っていた。

だけど、約束に間に合うことはなかった。

交差点に差し掛かった頃、僕の目の前を子猫が走っていった。

歩行者信号は赤く光っている。子猫は何を思い出したか、ミチのど真ん中で止まってしまった。

親猫らしき猫が、子猫を連れ戻そうとして、ミチに飛び出していった。

走ってきたトラックに猫が漠然としているように見えた。

そして僕はミチに飛び出した。当然ながら、トラックに轢かれて痛い。

猫が怪訝そうな目でこちらを見つめる。だって、しょうがないだろ?助けたかったんだから。

血が流れている感覚がある。視界は爆ぜていてなにがなんだかわからない。ただわかるのは、自分が

死ぬんだなってことと、やくそくがはたせなかったこと

しぬなんてやだなぁ、でも、もう、げんか、、、、、い、、、、、

視界が黒くなる中で、何かぬくもりを感じた気がした。

======================================

時が移った

父さんが、泣いてる。妹も泣いてる。母さんは、昔交通事故で僕をかばって死んでしまった。

よく考えてみれば、僕もお母さんと同じようにかばったんだな、なんてくだらないか

僕は死んだんだな・・・。

場面が映る、

そこは、公園。泣いてるあいつ。約束果たせなかった。

あいつは、優しいから、僕が死んだこと自分のせいだとか思って泣いてるのかな?

ソレだったらお門違いだよ、なんて小突いても、あいつは気づきもしない。

「_______」

あいつがなにか言うけど、聞こえない。

===================================

場面が途切れて、元の白い空間に戻ってきた。

でもさっきと違うのは、人がいるということ。

2人。女性と、小さな男の子。母子のようだ。

女性はいった。

「私たちはあなたに返しても返しきれない恩があります。
 あなたは自分を顧みず私達を助けてくれた」

僕は彼女たちに見覚えはなかった。

そして女性は凛とした声でこう続けた

「お行きなさい、あなたの望むところへ。」

そう言うと、僕の意識はその白い空間に溶けていった。。。。。

クリスマスの奇跡 =クリスマス・イヴ=

クリスマスの奇跡 =クリスマス・イヴ=

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-12-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted