am 5:00

 やわらかな朝の光が、カーテンに抱かれ、まだ、はんぶんねむたいぼくは、かちゃかちゃと鳴る、食器の音を聞きながら、くあ、と、ひとつ、あくびをした。
 しろくまの体温がのこっている、シーツを、手の甲で撫でて、意味もなく、ばた足をする。おなかにかけたタオルケットのむこうで、ぼくの足が、宙を蹴りあげる。すぐそこにあるちいさなキッチンから、しろくまが、起きたの、と言って、ぼくは、うん、とも、ううん、ともつかない、あいまいな返事をして、ぐん、と、のびをする。そこから、うつぶせになり、さらにのびをして、はあ、と、わざとらしく息を吐く。
 きみは、ときどき、ねこみたいだ。
 しろくまがくすくすと笑いながら、コーヒーを淹れている。ねこよりも、シーツの海を泳ぐ、さかなの気分で、ぼくは、カフェオレがいいなぁ、と言って、からだをよじらせ、ふたたび、仄かに暗い天井と対面した。
 はいはい、と、やさしさをにじませた声でこたえる、しろくまと、コーヒーの香りに折り重なる、デニッシュが焼けて溶け出す、バターのにおい。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-09-03

Copyrighted
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