忌み月
あおい はる
森の、浅い夜みたいな色のみずうみで、月のかけらをみつける。
すてた、だれかとつながれる通信機器を。未練なく、きりはなせたことを、だれか、ほめてほしい。
(その、だれかとのあいだにあった、かぼそい糸を断ち切ったのは、わたしだというのに)
二匹のしまりすが、わたしのまわりを、ぐるぐるまわりながら、遊んで、ときどき、どこからか、どんぐりをひろってくる。月のかけらは、ただの石ころにしかみえないけれど、でも、なんとなく、ただの石ころではない感じがしている。さわりごこちとか、かたさとか、つめたいような、あついような、ひどく曖昧な感想しか生まない、不確かさというか。第六感的なもの。他者の介入できない、わたしがひとりのにんげんとして、この世界にあらわれてから自然と培ってきた、感性めいたもの。
星が、まだ、かぞえるほどしか浮いていない、夜のはじまりに似た、みずうみの底に、月はある。
わたしをつれていっては、くれなかった。
忌み月