じゅうたんを渡る

じゅうたんを渡る

人の手で織られた
波の上を
夕焼けの上を
花畑の上を

一枚を織り上げるのに
ひとつの色を作り出すのに
どれほどの時間がかかったのか

しらない、わからない
無知を抱えたままで
わたしたちは絨毯をわたる

繰り返される作業のうえに

織られていく歴史のうえに

うるわしい景色は残れども
指についた跡はうつらない
残したいものはなにもかも

だから
色褪せてもなお
わたしたちは絨毯をわたる
飛び石のようだとしても

手足を使って、口を使って
からだが動く限り
景色をかたる

じゅうたんを渡る

工芸品の話

じゅうたんを渡る

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-28

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