じゅうたんを渡る
じゅうたんを渡る
人の手で織られた
波の上を
夕焼けの上を
花畑の上を
一枚を織り上げるのに
ひとつの色を作り出すのに
どれほどの時間がかかったのか
しらない、わからない
無知を抱えたままで
わたしたちは絨毯をわたる
繰り返される作業のうえに
織られていく歴史のうえに
うるわしい景色は残れども
指についた跡はうつらない
残したいものはなにもかも
だから
色褪せてもなお
わたしたちは絨毯をわたる
飛び石のようだとしても
手足を使って、口を使って
からだが動く限り
景色をかたる
じゅうたんを渡る
工芸品の話