no e p
ふたりの帰るところに、いつも、雨は降らない。
(あー、やさしさだけ、ほしかった)
(常時ではなく、いま、この瞬間だけでも、よかった)
電力の途絶えた町の、ものがなしくただよう、深夜のコンビニ。つないでいたはずの、きみの指が、次第に腐っていく。首に、長くて太い、白い蛇を巻いたひとが、ぼくらに向ける眼差しは、どこか濁っていて、息苦しさすら感じる。ひとびとは、一歩ずつ、黒い地面を踏みつけるたびに、沈んで、沈んで、沈んで。ここから、ぬけだせないでいる。ぼくは、欠けてゆくばかりの、きみを、掬うみたいに、ひっかけようとして、空かして。つかんだ感触は、やたら質量のある、熱帯夜の空気。
(夏って、いつしぬの?)
no e p