no e p

 ふたりの帰るところに、いつも、雨は降らない。
(あー、やさしさだけ、ほしかった)
(常時ではなく、いま、この瞬間だけでも、よかった)
 電力の途絶えた町の、ものがなしくただよう、深夜のコンビニ。つないでいたはずの、きみの指が、次第に腐っていく。首に、長くて太い、白い蛇を巻いたひとが、ぼくらに向ける眼差しは、どこか濁っていて、息苦しさすら感じる。ひとびとは、一歩ずつ、黒い地面を踏みつけるたびに、沈んで、沈んで、沈んで。ここから、ぬけだせないでいる。ぼくは、欠けてゆくばかりの、きみを、掬うみたいに、ひっかけようとして、空かして。つかんだ感触は、やたら質量のある、熱帯夜の空気。
(夏って、いつしぬの?)

no e p

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-24

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