黒髪
いわせてください あなたの黒髪は美しい、
すと一途に垂れこむ艶の翳 まるで清む湖へ往き着くよう、
その水音しずかに立てるような 潤う光のうつろいは、
暗み辷らせ舞踏させ、滴の反映と毀し落つるようでありましょう。
たとえば春の柔らかな風 一条一条にリズムをふるわせながら、
淡いヴァイオリンの音楽 滔々と、彼方の風景へそそぐことでしょう、
たとえば夏の炎ゆる陽射 風に波うつ一房は、鏡の如くそれ映し、
ひたむきに「あなた」を生きた証は、刹那久遠を照らし燃ゆるでしょう、
たとえば秋の木々の翳 揺れるふっくらとした髪は翳りに飾られ、
陰翳の美さらし墜落をする柘榴こそ あなたの情愛の真紅な贈物でしょう、
たとえば冬の積雪のうえ 静謐な雪に映える青みのかかったその肌に、
守りつづけた約束さながら、水音零す黒髪は清んでいるのでありましょう。
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いわせてください わたし、独りで湖へ向かう片恋詩人、
いわせてください わたし、あなたの「あなた」が好きなのです。
黒髪