焼き場(ウイルス)

第7波が来て、ウイルスによって亡くなる方が、明らかに増えた。
第6波の時は、数ヶ月で一桁だったのが、
第7波では、ここ数日ほとんど毎日、すでに二桁の方が亡くなって運ばれ、
私はその人々を、この夏の異常な暑さの中、更に熱い防護服を着て汗まみれになって、人々をお骨にする。
原因は、明らかで人々の行動制限が無くなり感染のスピードが増して、あちこちでクラスターが発生しているからだ。
新しい資本主義にとっては、この犠牲はしかたの無い事なのか?
経済を動かさないと、いよいよ廃業する人々があまりにも多すぎるから?
人は、経済によって生かされているという事を教えてくれたのは、二年前に腹の動脈が突然破裂して死んだ親友だった。
その彼がお盆で帰ってきたので、私は、彼と酒を飲みながら、
「人を殺すのも経済なんだよ。」
結局、犠牲になるのは、常に最も弱い場所で生きている人々であることを、
今のこの現実を見ないまま死んでしまった親友に、語りかけ、
「あげくに戦争まで起きてしまったよ。」
これじゃ、若者たちも、先行き不安が多すぎて死にたくなる気持ちもわかるよ。
と、
若い自殺者を骨にしている現実を親友に訴えかけた。
ここで、私が
何をどう言ったところで、為政者たちにとっては、死者は、単なる数でしかないのは百も承知している。
彼らにとっては、そんな人々より、暗殺された仲間の死の方が重要なんだよ。と、
私が酒に酔ってそんなことを、訴えても、親友はただ微笑んで聴いてくれた。

焼き場(ウイルス)

焼き場(ウイルス)

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-20

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