病室のカーテン
病室のカーテンは
しらじらとそっけない光をなげだしていて
愛してもいない男にからだをひらく
女のひとの裸体のようにきんと硬い反射をあげている
外から風が吹いて
ふっくらとましろい布が曲線を曳く
その表面に浮びすべり落ちる粉薬のような光を眺め
卑怯に擦り寄り毀れ落ちて往く わたしの肉体と宿命とを想う
私は義母を抱くようにカーテンに頬を縋る
貴女だけが 唯貴女だけが私のすべてを抱いてくれる
すべての私を不在の愛情で愛してくれる私の不在を すべてを
私の身はいま病室に不在である
すればわが心に一個の病室をカーテン一つで建築しよう
外から風が吹きふっくらと弓なりにしなる病室を 不在を
病室のカーテン