汚れっちまえよ

 ぼく、幾たびも 汚れっちまおうと自棄になりはしたんだが、
 何故かしら 純粋な水晶なる在るかも判らぬしろものに、

 すがりついてしまちまうも、嗚 ぼくなんぞが、疎外の現象、
 抜け出ることなぞ叶う筈もあらなんだ、きんと撥ねるがわが生だ。

 悲しみが 汚れっちまったと謳いながらも──中也さん、君よ、
 眸淋しく いたましい程清んでたさ、染まることなぞできない詩人。

 ぼく、幾たびも 真夜中鶏鳴鳴るように、「中也のように生きる」とね、
 決意しなおした身だけども、今のいまでも立派に普通に生きられなくて、

 それ美しいことなんでもないさ、なるがようにしかなりやせぬ、
 ぼくはきみが眸の湖へ、汚辱の川を掻き分けて、罵詈雑言を浴びながら、

 あとずさるように昇りたい、ありとあるもの毀し落して、泥に塗れて、
 疵と汚辱と軽蔑は、清楚へ剥いて澄ませるために 跳ぶ処でもあるようだ。

汚れっちまえよ

汚れっちまえよ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-17

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