汚れっちまえよ
ぼく、幾たびも 汚れっちまおうと自棄になりはしたんだが、
何故かしら 純粋な水晶なる在るかも判らぬしろものに、
すがりついてしまちまうも、嗚 ぼくなんぞが、疎外の現象、
抜け出ることなぞ叶う筈もあらなんだ、きんと撥ねるがわが生だ。
悲しみが 汚れっちまったと謳いながらも──中也さん、君よ、
眸淋しく いたましい程清んでたさ、染まることなぞできない詩人。
ぼく、幾たびも 真夜中鶏鳴鳴るように、「中也のように生きる」とね、
決意しなおした身だけども、今のいまでも立派に普通に生きられなくて、
それ美しいことなんでもないさ、なるがようにしかなりやせぬ、
ぼくはきみが眸の湖へ、汚辱の川を掻き分けて、罵詈雑言を浴びながら、
あとずさるように昇りたい、ありとあるもの毀し落して、泥に塗れて、
疵と汚辱と軽蔑は、清楚へ剥いて澄ませるために 跳ぶ処でもあるようだ。
汚れっちまえよ