ネモフィラブルーの友に

  1

 染まりえない光の硬く散る 象牙のきゃしゃな躰、
 霞の昇る如く苦痛にうねらせて まるで秘密と気品、
 ほうっと纏うがように、その淋しく澄む()の青年は
 翳りを帯びる神秘の青、蒼穹映す鏡面のそれ、
 いわく ネモフィラ・ブルーのワンピースを、
 ──さながら海で孤独育んだ魚 尾をしならせて、
   魂の根の深みへと、墜落しても往くように──
 か弱き品格の身振により 着付済ますのでありました。

 かれ ふしぎな色彩の新宿を、痛み感受しながら、
 あまりにあまりに 神経的な色で泳いで往く、
 ネモフィラ・ブルーはかれの心象によく似合う。
 青年は、深淵の暗みの焔へ投げこむように、
 雑踏の都会の風景を抛り されば歌の煙と立ち昇り、
 かれが眸と似た純潔──天とたなびき憧れて、
 わが身を産んだ土睨み、涙を秘めて撲るのですが、
 眼差、黎明に剥かれる如く 優しく清ますのでありました。

   2

 青春は、暗みと痛みが土壌です、
 其処にわが根を埋めるのが、若さの愚かな勇気です、
 ──シモーヌだって、そうしたことであるのでしょう?
 若さとは 憂いと怒りの煙り瑕つく孤独であります、
 叩いて叩いて、砕けぬ現実、
 裂いては裂いて、縫合する自我、
 視界の隅を 過ぎ往く星屑、砂と舞う夢はうつくし、
 手伸ばせば消える、深紅の蝶の一群の翳、

 眼玉は罅割れ 暗みに荒み、嵐のような相貌になり、
 されど眸ばかりは清む燦き、それは淋しさの証です、
 染まることを拒絶して、幸福すらも抛り投げ、
 唯 根の正直な声──砂金と掬おうともしているけれど、
 はらはらと毀れる真善美、翳抱き竦める不連続の夜、
 不断に響く 断続的な電子音、それ断末魔の哭き声で、
 嗚 そんなものが青春だ、暗みと苦痛が若さである、
 時々柔い陽落ちるなら、せいぜいのところ万事好い。

   3

 この青年はわたしの友です、大切なわたしの優しい詩人です、
   わたしは祈りもするのです、かれがどうか報われませんように、
 さればそれにより、かれがどこまでも報われますように、と。

ネモフィラブルーの友に

ネモフィラブルーの友に

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-17

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