奇怪な孤独の貌

 わたしが淋しさを奇々怪々に足踏みしていたら、
 友の来たるあしおとは いつのまにやら鳴りやんだ、
 ふいに 戸を叩く音がしたと思い扉をあけると、
 まっさらで 石膏のようにざらついた、淋しい風景があった、

 わたしが颯爽と友へ逢いにいこうと戸をあけると、
 うすぼんやりと伸びるまっしろな路があり、
 周囲にひろがるのは 毛足のそろわない畝の森、
 律義に路上をあゆんでいけば、気づけばずっと独りであった。

 わたしは遅刻をしているのか、早退をしているのか、
 どちらともいえぬのだけれども、のっぺりと濁ったわが視力、
 ひとは犬だというものを、打ち棄てられ張る孤独に視える、

 わたしが淋しさを奇々怪々に足踏みしていたら、
 来たる友のあしおとは消え、足元に奇怪な陰翳の凹凸があった、
 わたしは踏まれるそれを友だと想った、引き吊る淋しい貌のそれを。

奇怪な孤独の貌

奇怪な孤独の貌

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-17

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