貴族主義的賤民詩人

雪の制服 霞とまとい、万人に背を向け、昇る動きで摺り堕ちて往く、
泥沼の深み、不可視のダイヤの睡る処へと──。彼の纏う貧しき衣服、
幾星霜の内界戦争に裂かれて、まるで勇猛果敢な 内気さを晒すよう、

不幸・苦痛を根に吸って、若葉の如き艶のある。それ陽へ向けはしない、
よもすがら、理不尽なる月へ祈り、憎み愛す。突き放されるがかれの生。
眸憎悪に燃えて往き、無垢な硝子に澄み往く。地上より降る罵倒は祝福。

詩人は思想をリベラルな領域に佇ませ、わが魂を貴族主義的立場に置く、
されば泥濘に沈み寝て、ひとびとより、軽蔑と暴言を受けるを歓びとする。
孤独 青薔薇へ剥いて抛るのが彼の生活で、獲得のそれ、彼には無為。

扨て、そのパウダリー しっとりと豊かな象牙の艶をうつろわす、
韻と律動で死へと行進するための「雪の制服」、愚かな指がそれを剥いだ、
──ひそやかな透明、其処にはなにもない、めざめる不在のほかなにもない。

貴族主義的賤民詩人

貴族主義的賤民詩人

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-17

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