組曲

 肉体が透けるときの、刹那の、気配を感じて。わにさまが、我々にあたえてくださるのは、テンプレート的な慈悲だと、半壊した教室のかたすみで、もう、機能しなくなった学校という機関に縛りつけられたままの、せんせい、が言う。音楽室からは、レクイエム。ぼくの指先に、つめたい記憶。つくえや、いすのがらくたをおおいつくすのは、名もなき白い花。せんせい、が、ただ無秩序にはじまっては、おわってゆくばかりの愛を、くだらないと吐き捨てる。そのたびに、ぼくのこころは、引き裂かれそうになって、よのなかにそんざいする、恋だの、愛だのが、みんな、しんじられなくなって、拡散したくなる。無造作に。あれらはすべて、星の循環に組み込まれた、作為的なものだと。

 そこに横たわる少女のくちびるは、いつも、血を吸ったように赤い。

組曲

組曲

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted