雨と音楽、後髪曳く
地中海風の内装は瀟洒で佳い雰囲気、基調は白、
ブラウンとブルーの微妙な諧調の妙が素敵な、海辺の珈琲店。
扉ひらくたび、潤い揺れる香気曳いては立消える俄雨、
それさながらに、小鳥の翼とひるがえる 女のひとの髪が去来する。
その端 粉薬のようなしらじらと照る壁に影になった席には
ひっそりと淋しい詩人の僕が在る──まるでキルヒナーの心地だ。
彼女等の美しさは、わたしの幻影にて雨と音楽へ着付させて頂く、
花の香気曳く髪にしゃんと蔽い降る横貌は雨と打ち、音楽と肌つねる、
褒めてくれるかい? 僕はちらとなす一瞥さえも耐えたのだった、
されどほんのり揺らゆれる花は、わたしには視界にはむしろどぎつい、
脳髄荒らすgramな花束さながら、後ろ髪引かれる想いで悔恨をする。
なぜ 女のひとびとの美が雨と音楽へ象徴できるといって、
眸に映れば全身の統治を乱されるがふっと立ち、触れるまえ
姿は翳と霧消え、はや 後髪曳く香気を追懐するほかはないから。
雨と音楽、後髪曳く