真実の不幸
見えない
もういない人間に語りかけること以上に
切実な行為があるだろうか
手に入らないものが美しいのは
手に入らないから
思い出せないことは永久に
思い出せないままでいいから
偽りの幸福だけが知りたい
あなたがそれを教えてくれるたびに私は
真実の不幸に近づくことができるから
偽りの不幸は優しく微笑みかけてくる、今日も
私はそれに身を委ねてしまいそうになる
───偽りの、真実の、という言葉を使うことは、一つの宇宙を壞してしまうことだよ。
私は優しく微笑みかける、今日も
いつの日か穢されることが定まっている、偽りの不幸に対して。
真実の不幸