噛み煙草
幾たびも、苦みと苦痛を噛み潰し、
頭をクラクラとさすいたみに酔うがように
私は片恋の現実を 歯で砕く、押し潰す、
吐きだした浮遊する煙は ふしぎにしんとしている。
かのひとのオマージュはとおくで耀いている、
ましろい霞で ほうっと姿が浮んで消え、星と散り、
はや逢うことなきひと、オレンジの香気のみが漂ってくる、
幻 私の切情と綾織り棚引いて、刹那の空に、久遠を一瞬間照らす。
転調──私は悲哀の騎兵隊に衝き動かされました、
不穏な 渦巻く、黒いサイケデリックな宗教音楽がいたします、
めくるめく淋しさの空白に わが身音なく突き落されたのです…
されば私は、片恋という生涯の呪い、
不在の現実を 理想の不在を、慈しみながら噛み砕く、
私は淋しさに死にたい想いをするから──そいつを生の意味にした。
噛み煙草