サーカス

 (そら)のあおさに、沈みこんでいたものが浮上して、かるくなる。からだ。夏だ、という感慨。呼んでいるのは、オルカ。わたしだけの十字架、など、そんざいしていなかったように。肉体は質量をうしなったように。
 にせものたちが歌い、踊り、演じる。夜の部。
 冷房の効きがわるい、アイスクリームやさんで、わたしと、ネオと、ゆうれいが、みんな、揃いも揃って、おなじアイスクリームをたべている。モカ。お店のひとが、ときどき、あの、アイスクリームをすくう、丸いやつをもてあそんで、がしょ、がしょ、と音を出す。真夏の二十時は、いつも、どこにいても、なんだか空気が、よどんでいる気がするの。
 七日後にやってくるサーカスに、きみがいる。
 うつくしいのに、つくりものみたいな、わたしのしらない、きみが。

サーカス

サーカス

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-08

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