夏休み

 さらさらと流れている。小川に、白い花が浮かんでいる。かぞえきれないくらい、たくさん、白い花はぷかぷか浮かびながら、逆らうことなく、流されて、いずれは海に着くのだろうか。花屋のエプロンをした、やせっぽちのおにいさんが、白い花をばらまいていて、あれは、いいことなのか、わるいことなのか、よくわからないと思っていた。花は、自然のものであるから。人工的な、川や海のいきものに、悪影響をあたえるようなものではなくて、おそらく、ひとの手によって育てられたとはいえ、花であるから。学校で、道ばたにゴミを捨ててはいけませんとは習ったけれども。川に、花。
 メメが、小五にもなって、市民プールになんて行かない、と言って、わたしは、ひとりで、市民プールに行くのはだめって、おかあさんに言われているから、すでにふくらませてあったうきわを、じゃまだと思いながら、家に帰るとちゅうにある、パンダのおやこがやっているクレープやさんで、ちょっとごうかなクレープを買って、パンダのこどもとおしゃべりをして、それから、また家までの道を、とぼとぼ歩きだして、それで、白い花をまいている、おにいさんをみた。
 暑いせいだろうか、わたしと、おにいさん以外に、だれもいなかった。
 水、きもちよさそうと思いながら、白い花をみていた。
 ひなたで花は、さらに白く、光った。

夏休み

夏休み

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-31

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