あんぱんに黒ごま

 孤独な犬たちのよせあつめみたいな街で、夜空を転写したグラスを落として、割ったら、あふれた。たぶん、星々に寄生していた、生命。ていねいに、ひろいあつめてね、と、あの子はいう。ツインテールの少女。エヌ型という一種の人類と、恐竜時代からいる先住民の共存を謳う国家めいた機関が、ある朝、とつぜん、フレンチトーストしか食べなくなった先生のことを実験体にして、ぼくは、あらゆる生きとし生けるものをゆるせなくなった。なぜだろう。昆虫すらも。
 ツインテールの少女が、あんぱんをむしゃむしゃしているあいだに、ぼくはなまえも、かおもしらない、だれかの破片をひろいあつめる。ひとつずつ、だいじに。表面はつめたいけれど、ふしぎと、芯の方はあたたかい気がする、それらを。

あんぱんに黒ごま

あんぱんに黒ごま

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-29

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