九十九神3

九十九神の続きです。楽しんでもらえたら幸いです。

1

俺の包丁が女の子になると言うあり得ない事態が起きて早三日が経った。

その朝俺は包丁の心地言い音で目が覚めた。

「うぅん朝か」

「おはようございます早雲様。よく眠られましたか?」

「ん?あぁよく眠れたよ」

あの日から俺と九十九との生活が始まったのだが、九十九は俺の世話をすると言ってご飯はもちろん洗濯や掃除もしてくれているのだ。

「もうすぐで朝ごはんができますから」

九十九のご飯は美味しいのだが料理方法が独特で、食材を手刀で切るのだ。

これは、はじめて見た時はびっくりしたが、なんでも元々包丁だから切れ味が抜群なんだそうだ。

「出来ましたよ」

そう言って料理を運んできてくれた。

「おっ!美味そうだな」

今日の朝飯はご飯に味噌汁そして焼き魚と言う一般家庭の料理だった。

その料理は何故か3人前置いてある。

俺と九十九の分で二人前のはずなのだが、ここに爆弾娘がやって来る。

「おっはよう!」

「おはようございます。美紀様」

「おはよう九十九ちゃん」

扉を豪快に開けて入ってきたのは俺の幼馴染だった。

「お前なぁ。毎朝家に来るのやめろよ」

「なによ?別にあんたに会いに来てるんじゃないわよ。私は九十九ちゃんの料理を食べに来てるだけよ」

「九十九が大変だろ」

「だって九十九ちゃんの料理美味しいんだもん。美味しいものを食べにきて何が悪い?」

「おう?何という暴論」

美紀は最初こそ疑いの目はしていたものの、変身シーンなどを見せてやったら納得した。

今ではこの三日間毎朝家に来てご飯を食べに来る。

「良いんですよ早雲様。美紀様は早雲様の大事な人ですから」

「そうよ良いのよ」

「お前が言うんじゃねぇ!てか自分で料理しろよ。もしくは手伝え」

「私は料理を食べる専門なの!作るのは管轄外よ」

「あぁ。そうだったな」

そう言えば昔

「早雲にご飯作ってあげるね」

と言われて家の台所を貸した事があったが、ものの見事に破壊の限りを尽くし、出来上がったのはこの世の終わりのような色をしたチャーハンだったな。

「はい食べて?」

「えっ!これを食べるの?」

「たべてくれるよね?」

「う、うん」

食べてみたがまず最初に酸味がきて、次に辛味、次に甘みとどんどん味が変わっていき七色に変化していたったが、それは良い方ではなく俺の胃の破滅をもたらした。

「確かにお前は一生料理を作らないほうが良いな」

「何ようるさいわね。そう言えばあんた今日何の日か分かってる?」

「分かってるよ。今日から学校だろ」

「そうよ。今日入学式なんだからね」

「そうだな。そろそろ行かないと。じゃあ行って来るよ九十九」

「行ってらっしゃいませ。早雲様」

その時九十九は少し悲しそうな顔をした。

「ん?どうした?」

「い、いえ何でもありません」

「何してんのよ!早く行くわよ」

「おっおう!じゃあ行ってくるな」

「行ってらっしゃいませ」

俺と美紀は家を後にした。

学校に行ってる途中美紀が

「さっき何を話してたのよ?」

「いやなんか九十九が変わった様子を見せてたからさ」

「変わった様子?」

「うん。なんだか悲しそうな顔してたんだ」

「ふ?ん。なるほどね」

「ん?何がなるほどなんだ?」

「いや何でもないわよ。ほら早くしなさいよ遅れちゃうわよ」

そう言って美紀は走り出した。

「あっ!おい待てよ」

俺も後を追い、走って行った。

キーンコーンカーンコーン       キーンコーンカーンコーン

俺たちはギリギリで間に合いクラスを見た。

「あれ?私たち同じクラスじゃない」

「ん?本当だな」

「いやな偶然もあるもんね」

「嫌なとか言うんじゃねぇよ。つーか多分偶然じゃないぞ」

そう言って俺はクラス表の一人を指差した。

そこには梅宮 花月(うめみや かずき)と書かれていた。

「あぁなるほどねぇ」

そんな話をしてクラスの中に入ろうとしたら

「あぁ?!早雲と美紀ちゃんみ?っけ」

ハイテンションな男の声が聞こえて来た。

「よう花月!」

「おはよう花月くん」

「んふふん。おはよ?う」

花月は背が高く中々美形なのだが性格がナヨついている。

「クラス表見たかい?」

「あぁ見たよお前の仕業か?」

「ん?どうだろうね」

花月は俺のいとこなのだ。

俺が子供のころから仲が良かったので今でも仲がいいのだ。

この学校にしようと思ったのも花月が

「この学校にしよ。一緒に行こうよ?」

と言ったからである。

そしてなぜ花月が俺たちを同じクラスに出来たかと言うと、こいつのお母さんはPTAの理事長。

お父さんに至ってはこの学校の校長である。

そして花月に、この両親は甘かったためこのような性格になってしまったのだが。

こいつは普段はこんな感じだがやる時はやる男なのだ。

「まぁ?これからよろしくねぇ。美紀ちゃん、早雲」

「あぁよろしく」

「よろしくね」

花月は子供のころから家に来ていたので美紀の事も知っている。

こうして俺の学園ライフが始まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この状況を空を飛びながら見ている男がいた。

その男は上半身裸で、下はホットパンツの変態だ。

「う?んどうしたものか?何の試練をあたえようかなぁ?」

男はビックイベントの内容を考えていた。

「やっぱり第一の試練はベターにライバルかな?」

そう言って変体は不敵に笑った。

2

「いや?嬉しいなぁ。早雲に美紀ちゃんと一緒に学校に通えるなんて」

猫なで声を出したのは花月だった。

「俺はめちゃくちゃ勉強したんだぞ」

「えぇ?そうなの!早雲は昔から何事も”めんどい、かったるい”で何もしなかったじゃん」

「いやいや俺だってやるときゃやるんだぜ?」

「何が”やるんだぜ?”よ。試験の一ヶ月前に”勉強教えてくれ”って泣きついて来たのはどこのどいつよ」

「えぇ?早雲、美紀ちゃんに勉強教えてもらったのぉ?」

「うるせぇな良いだろ別に。って言うかお前なんて俺より頭悪かったじゃねぇか!なんで入れてんだよ!」

「うん?どうしてだろうねぇ?まぁ?一言だけ”親父”とだけ言っておくよ」

「確実に裏口じゃねぇか」

「人聞きが悪いなぁ」

そうだった、こいつは楽な方、楽な方に行く性格だった。

「まぁ?みんな入れたんだから良いじゃないかぁ」

「それもそうよ。早雲、あんた細かい事気にしているとすぐに年取るわよ」

「裏口は細かい事じゃない気がするんだが・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんな事を話している頭上でわ

「う?んライバルって言ってもどうすっかなぁ」

変体が考え込んでいた。

「うぅ?ん。こいつは難しいなぁ」

そこで下の高校のグラウンドからカキーンと小気味いい音がした。

「うぅ?ん。ぬわぁ!」

下から野球部の打った球が飛んできたのである。

「おいおい、俺がこんなべたな展開に引っかかると思うか?甘いわぁ!」

神様はどこからか取り出したか分からないがバットでボールを打ち返した

「ぬっふっふ。どうじゃい?・・・ってなにぃ!」

下の野球部員が不思議に思ったのかドンドン、フライを打って来たのだ。

「なめるなよぉ」

神様は最初の2,3球は打ち返したがそこからは神様に球が当たり続けた。

1HIT2HIT3HIT4HIT・・・・・・・・

「ちょっ待って!ブオ!やっやめ!ぶっ!ごめんって!おふ!」

10HIT11HIT12HIT

「おっおい!俺は服を着てないんだぞ。普通よりも防御力が低いん・・・ぼふ」

最後に顔面に致命的にぶつかった。

「うわ?うわ?うわ?」

某有名格闘ゲームの様に神様は吹っ飛んで行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ん?今なんか聞こえなかったか?」

「さぁ?あんたの気のせいじゃない?」

「そうか?なんかぼこぼこにされた奴の声がしたんだが・・・」

「何よ、その細かい情報が出る声は」

「う?ん空耳かぁ」

キーンコーンカーンコーン  キーンコーンカーンコーン

「あっ終わったみたいね。じゃあ今日の約束守ってね」

「ん?あぁ」

「じゃっ後で」

そう言って美紀は一人でそそくさと帰ってしまった。

「早?雲!一緒にかえろぅ」

女の子みたいな声が聞こえて来た。

「あれ?美紀ちゃんは?」

「ん?先に帰ったよ。なんか用事があるんだと。それで後で家に呼び出されたんだ」

「ふ?んそっかぁ。残念だなぁ」

「まぁいいよ帰ろうぜ」

「うん!」

そうして俺と花月は学校を後にした。

帰り道に

「ねぇ早雲。今日早雲の家に行っていい?」

「えっ!?いっいやだめだ」

「えぇ?なんでぇ?」

当たり前に駄目に決まっている。

俺の家には九十九がいる。

そんなの見られた日にゃ何を言われるか分からない。

「いやほら美紀との約束もあるしさ」

「う?んそうかい。んじゃあ今度にするよぉ」

「あぁそうしてくれ」

ふぅ?あっぶねぇ、セーフ。

「じゃあぁここでぇ?」

分かれ道に差し掛かった時、花月はそう言った。

「ん!じゃあな」

そこで俺たちは別れた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「よっしゃあ!出来たわ!」

美紀は一人、家でガッツポーズをしていた。

「ふっふっふ。これで早雲をアッと言わせて見せるわ」

美紀が見下ろした先には、ほっかほかの炒飯?が置かれていた。

だがその後ろの台所は、まるで嵐が来た様にごちゃごちゃ、いやぐちゃぐちゃだった。

「待っていなさいよ!早雲」

美紀は先ほど家に帰ってきて、すぐに台所に立ち、料理を作っていたのだ。

今日の朝に早雲の言った言葉が心に残っていたのだ。

そして見返してやろうとしていた。

「さぁ来なさい。早雲!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ただいまぁ」

「お帰りなさいませ、早雲様」

早雲は家に帰ってきた。

「美紀様が帰ってきたら自分の部屋に来いと言っておりましたよ」

「ん?そうかい。わかった今から行くよ」

「いってらっしゃいませ」

そう言ってまた九十九は悲しそうな顔をした。

「ん?どうした?」

「いっいえ!?なんでもありません」

「そうかい?んじゃあ行って来るよ」

「はっはい」

そう言って早雲は部屋から出て行った。

「早雲様またしても美紀様と・・・」

九十九は一人部屋で呟いた。

九十九はこの15年間、早雲を思い続けていた。

そしてやっとその思いが通じ、早雲と話が出来るようになったのだ。

これで九十九はずっと早雲のそばに居れると思ったが、早雲はいつも美紀と一緒にいる。

美紀は九十九のことは良く知らない。

だが九十九は美紀の事を良く知っている。

なぜなら子供のころから早雲は美紀といつも一緒にいて、九十九にその事を話していたからである。

それだからと言って九十九は美紀の事が嫌いな事ではない。

むしろ大好きだ。

なぜなら美紀は早雲にとって大事な人だからである。

それは九十九には痛いほど解かっている。

早雲様の大事な人は私の大事な人、この方程式が九十九の中で成り立っている。

だがそれでも、それでも九十九は、そんな方程式をぶち破って早雲と美紀より一緒に居たいという気持ちがあるのだ。

そんな気持ちを九十九は言葉に出せないでいた。

「この気持ちはどうすれば・・・」

「気持ちがどうかした?」

「!!??」

いつの間にか早雲が目の前に立っていた。

「早雲様どうしてここに?」

「いやさ、俺が出かけるとき九十九が悲しい顔をしていたろ?もしかして一緒に出かけたいんじゃないのかなぁと思って誘おうと思ったんだけど・・・」

「早雲様・・・」

私の気持ちは届いていた。

ほんの少しでもこの方に届いていたんだ。

そう思うと九十九は涙が止まらなかった。

「おっおいどうしたんだよ!九十九?大丈夫か?」

「いえなんでもありませんから」

優しい言葉を掛けられれば掛けられるほど涙は止まらなかった。

「おい本当に大丈夫かい?行くのがいやかい?」

「いっいえ大丈夫です。よろこんでお供させていただきます」

そう言って九十九は笑顔を見せた。

この笑顔は今日九十九がはじめて見せた笑顔で、今までで最高の笑顔だった。

なぁ皆、六畳一間の部屋に刀が置いてあって、その上に人情と書かれた掛け軸が貼り付けてあり、それ以外は何にも無い部屋を誰の部屋だと思う?

まぁ一般的に考えるとヤーさんの家だよな。

もしくは金持ちの家とか。

だが金持ちなら六畳一間の家なんかに住みゃしないよな?

てことはだ、ここはヤーさんの家か?

と考えた君!残念はずれだ。

その答えは言うなれば、ピッチャーマウンドから投げて三塁に投げちゃうくらい的外れだ。

正解は俺の幼馴染の女の子の部屋でした。

「いらっしゃい。上がって良いわよ」

俺は美紀に誘われるまま中に入っていった。

「あら九十九ちゃんも来たのね」

「すいません。お邪魔します」

「いいのよ。人数が多いほうが私も都合が良いわ」

「ていうかよぉ、美紀。お前この部屋に住んでるんだよなぁ」

「えぇそうだけど・・・なんか問題でも?」

「いっいやなんでもないよ」

美紀は子供のころから女の子が好きそうなテディベアとかお人形さんなどは持っていなかった。

なぜかと言うと、これは親の影響なのだ。

だが勘違いしないで欲しいのは美紀の家はもの凄く貧乏とかではない。

美紀の家は関東一帯を仕切っている松尾組なのだ。

小さい頃から周りがヤクザだらけだったとしたら、女の子らしいものなんて欲しがる訳がない。

そう言えば美紀の小学校の時の作文で、『今、自分が欲しい物』という作文で、周りの女の子達は人形だとか、動物だとか書いていたが美紀だけ『義理と人情』って書いてあったな。

そんなわけで美紀の部屋はもの凄く男臭い。

だが美紀は親父さんにとても愛されて育っていた。

なので一人暮らしをする時も一悶着あったようだ。

それで結局、美紀の部屋に護身用の刀を置く事で片付いたのだ。

「美紀。変な奴が来たらすぐにこいつで切り捨てるんだぞ」

と言う言葉を添えて。

この護身用の刀は親父さんが代々受け継がれている刀なのだそうだ。

まぁ切り殺さないにしてもお守り代わりにはなっているだろう。

「でっ美紀。なんだよ用事って?」

「あんた今日の朝、言った事覚えてる?」

「今日の朝?」

「ご飯を食べるなら手伝えと言ってましたよ」

俺が考えていると九十九がこっそり教えてくれた。

「あぁそうだった。手伝えと言ったな」

「いやそこじゃないわ。その後よ」

「その後?・・・あぁ一生料理をするなってやつか」

「えぇそうよ。あんた私がまったく料理が出来ないと思ってるでしょう」

「ん、あぁ」

「二度とそんな減らず口が叩けない様に料理を作ったから食べなさい」

「えっ!?お前が料理をしたのか?」

「そうよ。なんか変?」

「いやこれで、なんで台所が可愛そうなくらい破壊されているのか分かったわ」

「うるさいわね。問題はそこじゃないのよ。料理よ」

そう言って美紀は台所から皿を持ってきた。

「はい!食べてみて」

そう言って渡されたのは、おこげとかそう言うレベルの問題じゃないくらい焦げた米に、何か分からない緑色の物体が入っている。

他には調理前は食べ物であったであろう炭が入っていて、皿を傾けると何故か赤い液体が出てきた。

「おいおい何だこの研究物は?」

「炒飯よ」

「おいおい嘘は良くないぞ、美紀。これはどんな錬金術を使ったんだ?」

「御託はいいから早く食べなさいよ」

せかされてしまった。

こうなったらどんなに言葉を並べても食べるまで家に帰してもらえなさそうだ。

「後で九十九ちゃんも味見してみてね」

「・・・・」

九十九は言葉を失っているみたいだ。

それもそうだ!こんなものどうやって作ったんだ。

「九十九ちゃん?」

「はっはい!よろこんで」

ビックリした様子で返事をしてしまっていた。

「でもちょっと待っててね。この馬鹿をアッと言わせてからね」

「いやもうアッと思っているぞ」

「いいから食べて。感想を言ってよ」

う?むこいつは覚悟を決めるしかないかな。

「じ、じゃあ食うぞ」

「えぇ」

ドクンドクンドクンと心臓が脈打つ中、恐る恐る一口食べてみた。

「こっこれは!」

「どう?」

なんとコメントすればよいのか・・・

この食感は、まるで砂場の砂を食べている感覚。

味は何というかほぼ”無”だ。

「味はどうなのよ?」

「あっあぁこれはだな・・・」

だめだ。飲み込めないぞ。

これはなんだ?

どうしよう?吐くべきか?いや美紀が作った料理だ。

絶対に吐き出すなんて真似は出来ない。

「ちょっと早雲?早雲!」

飲み込めず吐き出せず、息が出来なくなってきた。

だっ駄目だ!このままじゃ・・・

「大丈夫?ねぇ?」

もっもう駄目だ・・・視界がブラックアウトする。

「早雲様!」

「早雲!」

早雲は泡を吹いて倒れた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はっ!ここは」

俺は突然気がついた。

「お目覚めになられましたか!よかった」

目の前には九十九がいた。

「あの後、早雲様は気絶なされて家に運んできたのです」

「あぁそうだったのか」

まさか料理で気絶するとはな。

「本当に無事でよかった・・・」

九十九はとても安心した顔をした。

「やっと起きたのね」

台所から濡れたタオルを持って美紀がやってきた。

「じゃあ私帰るから」

そう言って美紀はそそくさと帰ってしまった。

おかしいな?いつもの美紀なら

「私の料理を食べて気絶するなんてどう言うことよ!!」

なんて言って怒ると思ったんだが・・・

「美紀様はずっと付き添っておられたのですよ」

「そうなのか・・・」

美紀が作った料理で気絶したなんて・・・美紀には悪い事をしたな。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

美紀は自分の部屋に帰ってきた。

そしてテーブルの前に座った。

そのままテーブルに突っ伏してしまった。

その横にはあの料理が置いてある。

それを見て、美紀は少しだけ口に入れてみた。

「ぶっ!まずい・・・」

すぐに吐き出し、台所へ走って行った。

「あいつこんな不味い物を吐き出さず・・・」

その場に美紀は泣き崩れた。

「ごめん・・・ごめんねぇ早雲・・・」

隣に声が聞こえないように声を殺して美紀は泣いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「竹中早雲め!よくも我がお嬢を泣かしてくれたな」

美紀の部屋の刀が呟いた気がした。

4

「さてと。どーすかっな」

早雲が目を覚ました頃、神様は故我荘(こわれそう)の近くに来ていた。

試練の相手、ライバルを見つけるためだ。

「はぁ?。つーか何でここまで来るのに5回も警察に通報されにゃいけんのだ」

神様は何時も通りの変体ファッションでここまで来たのだが、見る人見る人がカメラを向けるか、警察に電話していた。

「まぁそんなことよりも、ライバル、ライバルっと・・・ぬおう!!俺の神様センサーがびんびんに反応してるぜ」

説明しよう!神様センサーとは、神様が九十九神の反応を感知したときに乳首がその方向に向くのだ!!

「こいつは・・・あのかわい子ちゃんのとこの・・・よし!ゴットコンタクトだ!」

説明しよう!ゴットコンタクトとは神様が九十九神など人の目には見えないものと話をするとき、亜空間を作り出し、話が出来るようにする技なのだ!!

「いや?君が今度の九十九神候補か」

そう言って神様が見ている相手は、美紀の部屋の刀だった。

「ん?誰だ貴様」

「ん?神様だ!」

「死ね」

「おいおいツンでれか」

刀はもう神様には興味がないようだった。

「その姿じゃ顔の表情が読めないから人間の姿にするぞ」

刀からは反応がない。

「おぉふ!無視ですか。いいですよ勝手にやらしてもらいますよ。くらえゴットクリエイト」

説明しない!

神様指先から光が放たれた。

その光が刀に当たった瞬間刀は女の子になった。

その女の子は赤い髪でショートヘアー、来ている服は侍が着る和服である。

そしてその腰には刀が差してある。

女の子の目は人間にしてくれた神様には向いてなく、その赤い瞳は主である美紀に向いていた。

「なるほどねぇ。美紀ちゃんが泣いていたからあんなに反応があったのか」

神様は美紀の方を向いて喋りだした。

「!?。貴様!我がお嬢を知っているのか」

「知ってるも何も・・・俺、神様なんだけど」

「何をわけのわからんことを・・・なにぃ!なんだこの姿は!」

「えぇ?君まさか何も気づいて無かったの?」

「私はずっとお嬢を見ていた。まさか貴様が私をこんな姿に?」

「ん?そうだよ。好きになっちゃったかい?いいんだよ?この胸に『神様ありがとう』って言って飛び込んできても」

そう言って神様は両手を広げた。

「死ね」

女の子は腰に差した刀を抜いた。

「いやいやいや!冗談ですよ冗談」

「ふん!そうか」

そう言って女の子は刀を元に戻した。

「貴様の目的はなんだ?気まぐれで私のような物を人の形にしたのか?」

「う?ん気まぐれではないなぁ。君が美紀ちゃんと話したそうだったからねぇ」

「確かに美紀様と話したいと思ったが・・・」

「まぁ難しいことは考えないで、ご主人様のところへ行って来れば?」

「いいのか!」

女の子はあからさまに嬉しそうな顔をした。

「そんな顔も出来るんだねぇ。いいね惚れたよ」

「貴様は死ね」

そう言ってそそくさと女の子は亜空間から出ようとした。

「ん?これはどこから出るんだ?」

「あぁ?そこからだよ」

そう言って神様が指差した方向にはドアがあった。

「あぁ?、あと一つ言い忘れてた」

「ん?」

「君は早雲のこと良く思ってないみたいだねぇ」

「当たり前だ!あの男はお嬢を泣かした!」

「なるほどねぇ。それが鍵となって反応したのか」

「なんだ?もしや奴に手を出すなとでもいうのか?」

「いやいや。そうなれば俺の試練が出来るから大いにオッケーだよ」

「試練?」

「いやこっちの話さ」

「ふん。貴様が何を企んでいるのか知らんが、私は本気であの男を殺すぞ」

「うん。いいよ。じゃあがんばってね、カワイ子ちゃん」

そう言い終わる前に女の子は出て行ってしまった。

その瞬間、亜空間は消えてなくなり、神様は故我荘の前に立っていた。

「これでまず一つの試練だ。はっはっはっ」

神様は馬鹿みたいに高笑いをした。

「あっ!あそこです変体が居るところは」

どこからか女の声が聞こえたと思ったら30代位の女性が警察官を連れてきた。

「あっ!貴様かぁ!この辺を騒がしているど変体っていうのは」

「うっそぉ?ん。6回目ぇ」

そう言って変体は警官と逆方向へ逃げ出した。

5

今の時刻は草木も眠る丑三つ時。

だいだいの人間は寝ているだろう。

早雲も大勢の人間と同じように眠っていた。

ガチャリ

早雲の部屋の鍵が開く音がした。

早雲は熟睡しているので起きはしない。

早雲の枕元に着物姿の女の子が立っている。

「お嬢を泣かせた罪は重いぞ。その罪、死で償え」

着物の女の子は腰に着いた刀を抜いた。

その刀を構えると

「死ね」

刀を振り下ろした。

その刀の刃は気持ちよさそうに寝ている早雲の首を狙っている。

まったく早雲は起きそうに無い。

カキン

金属と金属がぶつかり合う音がした。

「なに!」

刀は早雲には当たらず、いつの間にか居た九十九によって封じられた。

九十九は素手で刀を受け止めていた。

「あなた、何者ですか?早雲様に危害を加えようとしたな」

「貴様こそ何者だ?」

「私は早雲様の九十九神です」

「九十九神だと!・・・なるほど。この男は貴様のご主人様ってことか」

「私の質問に答えてもらっていませんよ」

「今から死にゆく者へ名乗る名前はない!」

刀に力を加えた。

上から力を加えられているので九十九には分が悪い。

「くっ!早雲様!起きて下さい!」

九十九の叫びによって早雲は目を覚ました。

「どうしたんだい?つく・・・おう!」

目を覚ました早雲は飛び起きた。

「なにこれ?どうなってんの?」

「私にも分かりませんが、彼女は早雲様を殺そうとしています」

「えっ?なんで?」

「解らないのか。貴様はどこまでお嬢を傷つければ・・・」

「お嬢?」

「もう黙れ。そして貴様は死ね」

女の子は九十九を振り払い早雲に切りかかる。

「おい!ちょっと待てよ」

「待たん」

斬りつけられる瞬間

「早雲!どーしたの?」

扉から美紀の声が聞こえた。

「お嬢!」

女の子は刀を振り落とすのをやめ、扉へ向かった。

扉の前で立っていた美紀の前に立つと

「手前はお嬢の恨みを晴らさしていただきます」

そう言って中腰になり、右手を出しながら言った。

「はい?あなた誰なの?」

「心配しないでください。お嬢の恨みは私が必ず晴らしてみせます」

美紀の質問は完全無視で女の子はまた刀を構え、早雲へ斬りかかった。

「私がそんな事させると思いましたか?」

九十九は降りかかってきた刀を素手で受け止めると、女の子に向かって手刀を振り下ろした。

女の子はその手刀を軽く避けた。

「なるほど。なかなかやるじゃないか」

「褒め言葉として受け取っておきます」

二人はにらめ合った。

「この状況はどういうことよ」

美紀は早雲に尋ねた。

「いやぁ俺に言われても解らんのよね」

「わからんってあんた。命狙われてんでしょ」

「だって狙われるような事した覚えが無いぞ」

「貴様まだ言うか」

女の子は早雲を睨み付けた。

「おい!お前。九十九といったか。ここだとお嬢に危害が加わるかもしれない。別の所に場所を移すぞ」

そう言って女の子は走って行ってしまった。

「早雲様ちょっと行って参ります」

「あっ!おい九十九」

早雲は止めようとしたが、その言葉よりも早く九十九は行ってしまった。

「おいおいどうなってんだよ」

「なんであんたは命狙われてんのよ?」

「さっきも言ったけどわかんねぇんだよ」

う?んと早雲は悩んでしまった。

「この俺様が説明してやろう」

いきなり声がしたかと思ったら、いつの間にかほぼ裸の変体がいた。

「お前は神様!」

「はいそうで?す。神様で?す」

軽い感じで神様は挨拶をしてきた。

「あんた誰よ?早雲の知り合い?つかなんでそんな格好してんのよ?」

「おいおい、いきなり質問責めかい?おじちゃん一つ一つ答えていくよ」

「いいから早く答えなさい」

「怖いなぁ。じゃあまずは親睦を深めるってことでハグを・・・」

神様は美紀に抱きつこうとした。

「きゃー変体!」

美紀はとっさに右ストレートを繰り出した。

そのストレートは腰の入ったきれいなストレートだった。

その拳は神様の顔面を的確に貫いた。

「おぶふ」

その場に神様は崩れ去った。

「おいおい。いきなり神様をノックアウトしてどうすんだよ」

「だっていきなり飛び込んでくるから・・・」

「おーい起きろー」

早雲は神様の頬を叩いて起こした。

「うっう?ん。良い拳持ってるじゃない」

そう言って神様は立ち上がった。

「でっ!なんで俺が命を狙われなきゃいけないんだ?」

「今から説明してやるよ」

神様は最初から話し出した。

それはもう本当の最初から。

九十九がなぜ人間になれたか。から美紀の刀を人間になれるようにしたところまで。

「なるほどな。彼女が美紀の九十九神なんだな」

「あぁそうだ。彼女は美紀ちゃんと話したがってたからな。それにお前の事も恨んでたみたいだし、第一の試練にちょうど良いかなって思ってな」

「そこまでは分かったけど・・・なんであたしの刀が早雲を恨んでるのよ?」

「あぁ?それは美紀ちゃんが泣いていたからって言ってたよ」

「泣いてた?」

早雲は首を傾げた。

「えっ!?なんでもないわよ。そんな事よりあの子達、探さなきゃでしょ」

美紀は慌てて話題を逸らした。

「そうだ!あいつらどこに行ったんだ?・・・おい神!お前なら分かるだろ」

「おい神!ってなぁ・・・お前神様に対して敬意ってもんは無いのかね」

「いいから教えろ」

「やだ」

神様は子供が駄々をこねるようにして、すねてしまった。

「ちょっとあんた教えなさいよ」

「やだも?ん」

「教えないと・・・あなたの大事なもの蹴り飛ばすわよ」

そう言って美紀は神様の股の下に足を置いた。

「いや、すいません。教えます」

急に神様はおとなしくなった。

今度から美紀を怒らすのは止めて置こう。

「お前たちの高校のグラウンドに居るはずだよ」

「私たちの高校ね。行くわよ早雲!」

「あぁ行こう」

早雲と美紀は高校に向かって走り出した。

一人残った神様は

「さてと。俺も見に行くかな。絆ってやつを」

神様は消えていなくなった。

九十九神3

次もお楽しみに。

九十九神3

たぶん面白いと思います

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-04-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 1
  2. 2
  3. 4
  4. 5